ロシアと西欧直結、天然ガス新輸送管が稼働

2011/11/8付
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【ベルリン=菅野幹雄】世界最大の天然ガスの埋蔵国であるロシアと西欧をバルト海経由で直結する海底パイプラインが完成し、8日に関係国の首脳がドイツ北部で稼働式を開いた。原子力発電所の稼働をやめるドイツがガスへの依存を強めるなかで、欧州とロシアのエネルギー協力拡大の柱となる。一方で頭越しで進められた形の供給網の建設に中・東欧が反発。ロシアとの急接近には欧州内の警戒感も根強い。

「ノルド・ストリーム」と呼ぶパイプラインの終点となるバルト海沿岸の独ルプミンで開かれた式典で、ロシアのメドベージェフ大統領は「ロシアとEUの協力に新たな一面が始まった」と発言。ドイツのメルケル首相は「持続的で安定したロシアとの協力を将来も続けていく意志を示した」と表明した。フランスのフィヨン首相、オランダのルッテ首相や欧州連合(EU)のエッティンガー欧州委員(エネルギー担当)も列席した。

パイプラインはロシアのサンクトペテルブルク西方から独北部までの1224キロをバルト海の海底経由で結ぶ。2005年に着工が決まり、総投資額は74億ユーロ(約8000億円)。1本目の輸送管を10年4月から1年余りの工期で完成させた。ロシアのガスプロムが51%、独BASF、エーオンやフランス、オランダのエネルギー関係企業4社が残りを出資した事業会社が運営する。

▼「政治リスク」回避 12年末に803キロの第2輸送管が稼働すると、2600万世帯分に相当する年550億立方メートルのガスをロシアから西欧に供給できると事業会社は説明している。ロシアからEUに対するガス輸出の3分の1がバルト海経由に切り替わる計算だ。

西欧にとって、海底を通した新たな輸送管はガス供給を巡る「政治リスク」の回避につながる。従来、ロシアからのガス輸送網は旧ソ連諸国を経由する大陸ルートだけだった。09年初めにはガス価格交渉の難航でロシアがウクライナへの供給を一時停止し、通り道をふさがれた西欧もガスの供給不足に見舞われた。

欧州内のエネルギー政策の転換もプロジェクトの重要度を高めた。特に日本の福島第1原発事故を受け22年までに国内原発を全て停止すると決めたドイツは、自然エネルギーの強化と並んで地球温暖化への影響が比較的小さいガスをエネルギー代替の柱に据えた。事業を進めたシュレーダー前首相の親ロシア路線に批判的だったメルケル政権も、ロシアとの協力強化に急傾斜している。

▼「独り占め」懸念 一方、自国を迂回されるような供給網の整備に、EU内外の中・東欧諸国は批判的だ。ロシアから見た供給網の重要度が下がるウクライナや対ロ感情が厳しいポーランド、バルト諸国の間には、経済力の豊かな西欧が天然ガスの取引を「独り占め」してしまわないかとの懸念が強い。

12年の次期大統領選でプーチン首相の返り咲きが事実上確定し、独裁色を強めるロシアの政治体制に対する欧州の疑念も根強い。経済活動や国民生活の命脈である供給管の建設を通じてロシアへの依存を高めれば、将来の関係悪化によりエネルギー安全保障が揺さぶられるリスクも生まれる。欧州はジレンマを抱えた格好だ。

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