北朝鮮、原子炉を再稼働 韓国政府が公式に確認
6カ国協議再開遠のく
【ソウル=小倉健太郎】韓国政府高官は8日、北朝鮮・寧辺(ニョンビョン)の実験用黒鉛減速炉(原子炉)が再稼働したとの認識を示した。日米韓のいずれかの政府が再稼働を公式に確認したのは初めて。日米韓が求める「非核化に向けた具体的行動」に逆行する動きで、北朝鮮核問題のための6カ国協議再開は遠のいた。
情報機関である国家情報院長が同日、国会で、「北朝鮮はウラン生産など核能力を強化するために原子炉を再稼働した」と話した。国会に出席した議員からの情報として聯合ニュースが伝えた。
北朝鮮は6カ国協議での2007年の合意に基づき寧辺の原子炉を停止。いったんは冷却塔を爆破したが、13年4月、国際社会の制裁強化などに反発して再稼働を宣言した。9月にはタービン建屋から蒸気とみられる白煙が上がる衛星写真から、稼働中か稼働が近いとの分析が出ていた。
北朝鮮は最近、対話姿勢も示していた。核放棄を受け入れた05年9月の6カ国協議の共同声明と、12年の米朝合意に復帰する意向を中国に表明。6カ国協議の再開にも意欲を見せた。だが今回、原子炉の再稼働が判明したことで、核放棄には応じない姿勢があらためて浮かび上がった。
中国は習近平主席が7日の中韓首脳会談でも6カ国協議の早期再開を呼びかけるなど、北朝鮮と国際社会の対話に向けた努力を続けてきたが、当面は難しくなった。
国家情報院長は南北関係に関連して、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が「(朝鮮半島の)3年以内の武力統一を公言している」とも述べた。
南北は事実上唯一の共同事業である開城工業団地が9月、5カ月ぶりに稼働を再開するなど一時的に関係改善の兆しも出ていた。最近は再び関係が後退。7日には朝鮮人民軍総参謀部が日米韓の合同海上訓練を非難する報道官談話を発表したこともあり、融和ムードを取り戻すには時間がかかる可能性が高まってきた。
国家情報院長は北朝鮮軍の動きについても言及。多連装ロケット砲を大量生産し、首都圏などに向けて配置したほか軍団長級以上の幹部44%を交代させる人事刷新をしたという。
一方、金寛鎮(キム・グァンジン)国防相は8日、国家情報院長の報告に関連して「北朝鮮の挑発に関連した差し迫った動向はみえない」と述べ、緊迫した状況ではないとの認識を示した。