EU、ポルトガルに最大9兆8000億円支援
IMFと共同で
【ブリュッセル=瀬能繁】ポルトガル政府は6日夜(日本時間7日未明)、欧州連合(EU)に金融支援を要請した。巨額の財政赤字を背景にポルトガル国債の利回りが急上昇し、金融市場で資金調達するのは困難と判断した。EUは国際通貨基金(IMF)と共同で創設した制度を使って金融支援し、融資額は最大800億ユーロ(約9兆8000億円)となる見通しだ。

EUなどがユーロ導入国の資金繰りを支援するのはギリシャ、アイルランドに続き3カ国目。EUとIMFは昨年5月にギリシャ向けに総額1100億ユーロを融資することを決め、これまでに約半分を実行した。昨年11月にはアイルランド向けに総額850億ユーロの融資を決めている。
ポルトガルについても、4400億ユーロの欧州金融安定基金(EFSF)を中核とする総額7500億ユーロの緊急融資制度で対応する。
ポルトガルのソクラテス首相は6日夜のテレビ演説で「我が国は重大な局面にある。何も手を打たなければ状況はますます悪化すると確信した」と支援要請の理由を明らかにした。EUのバローゾ欧州委員長は「できるだけ迅速に対応する」との声明を発表した。
ポルトガルは国際競争力のある産業が少なく、財政赤字が常態となっていた。政府は付加価値税の引き上げ、社会保障給付の削減などで財政再建に着手したが、2010年の財政赤字の対国内総生産(GDP)比率は8.6%と当初目標の7.3%を大きく上回った。
3月23日には議会が政府の財政再建策を否決。ソクラテス首相が辞意を表明し、6月5日の総選挙実施が決まった。こうした財政難や政局混乱を契機とする信用不安でポルトガル国債(10年物)の利回りは8%台と過去最高水準で推移した。6月の49億ユーロの国債償還のメドがたたない状況となり、最終的に「EUの枠組みで支援を求めるのは不可欠」(ドスサントス財務相)と判断した。
欧州中央銀行(ECB)は7日の理事会で、政策金利の引き上げを決める公算が大きいとの観測が出ている。今のところポルトガルの財政危機がスペインやイタリアなどに波及する見方は少ないが、ECBがポルトガル問題でどんな判断を示すかも金融市場の関心を集めそうだ。
EUの金融支援はユーロ圏の全会一致の同意が必要で、これからIMFと共同でポルトガル政府と融資の金利、期間、財政再建策などの具体的な支援条件の協議に入る。支援額は未定だが、ルクセンブルクのユンケル首相(ユーロ圏財務相会合議長)は750億ユーロ程度が「妥当」との見解を示している。