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中国経済特区、曲がり角に 深センで30周年式典

人件費上昇、競争力に陰り

【深セン=吉田渉】広東省深セン市で6日、「経済特区」の成立30周年を祝う式典が開かれた。出席した胡錦濤国家主席は「深セン経済特区の発展は奇跡的だ」と述べた上で「今後は国内外の変化にさらに対応する必要がある」と強調した。同市は安い労働力を武器に外資系製造業を誘致して急成長を遂げた。だが人件費や地価の高騰で競争力に陰りも見え始めており、同市は付加価値の高いサービス業の育成に成長戦略の軸足を移す。

式典では同市が拠点の電池・自動車大手「比亜迪(BYD)」の王伝福総裁や香港の著名実業家、李嘉誠氏らも壇上に上り、深セン特区が中国経済の成長に果たした役割を称賛した。

GDPは3000倍超

同市は30年前には30万人が暮らすひなびた漁村にすぎなかったが、1980年に中国初の経済特区となり、外資系製造業への優遇税制などを相次ぎ導入した。日本を含む外資系企業が労働集約型工場を相次ぎ開設し、中国最大の輸出拠点となった。2009年の域内総生産(GDP)は80年の3000倍を超す約8200億元(約10兆2000億円)に達した。

「世界の工場」として急成長を遂げた同市だが、競争力は揺らぎ始めている。総生産額から固定費を引いた「工業増加値」の1~7月の前年同期比増加率は12.7%で、中国全体の17%を大きく下回る。

胡主席は同日の祝辞で「住民の所得を高める必要がある」と強調した。同市住民の平均月収はすでに4000元近いともいわれ、中国では最も高い水準だ。しかも今春以降の労働争議多発を背景に賃金は右肩上がりで上昇を続ける。それでも内需底上げを掲げる胡主席は、人件費の上昇を後押しする姿勢を強くにじませた。

 かつての工場集積地帯では高級マンションの開発が進み、新たな工場用地の確保も難しい。

胡主席「転換を」

胡主席は「経済特区は経済発展方式の転換を急ぐ必要がある」とも述べた。深セン市は労働集約型製造業に頼った成長モデルを見直し、デザインやアニメ制作、金融業など新産業の育成を急ぐ。深センが先行した外資製造業優遇策は他の都市にも広がり、優位性はすでに薄れているからだ。むしろ世界に開かれた香港に隣接する特性を生かし、新たな成長エンジンを育てる方針に軸足を移している。

その象徴が同市蛇口地区にある「三洋工場区」だ。経済特区が成立した80年代初頭に三洋電機が電子機器工場を開設し、特区を代表する工場地域として国内外に名をはせた。だが今では三洋は同地での生産を停止。市政府と不動産開発業者が共同で跡地を再開発し、ベンチャー企業向けの貸しオフィスとして生まれ変わった。近代的にデザインされたオフィスには70社が進出し、2700人が働く。

中国の「改革開放」の象徴として経済成長をけん引した深セン市が直面する課題は、中国の他都市でも遠からず発生するのは間違いない。深セン市が新たな成長モデルを創造できるか、中国経済の先行きも左右する。

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