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鳥インフル封じ込めを強化 中国、上海の卸売市場閉鎖

【上海=菅原透】中国当局が、鳥インフルエンザウイルス「H7N9型」の封じ込め態勢を強めている。上海市は5日、卸売市場での生きた鳥の取引を全面停止すると発表。広東省が対策委員会を発足させるなど各地で対策を取る動きが広がった。ただ5日も江蘇省で新たに2人の感染者、浙江省で1人の死者を確認するなど、完全な封じ込めには至っていない。

上海市政府は5日午後、緊急記者会見を開き、ニワトリ、アヒルなど生きた鳥の市場での売買を6日から全面的に停止すると発表した。4日に市内の卸売市場のハトから「H7N9型」が検出されたことが明らかになったため。すでにウイルスが見つかった市場では鳥の取引区域を閉鎖。2万羽以上を処分した。

中国政府の農業省によると、閉鎖された上海の市場にいたニワトリ、ハトなどを調べたところ「H7N9型」ウイルスを複数検出したという。今後上海以外でも市場の閉鎖措置を進める可能性がある。

また首都・北京では原因不明の肺炎患者が出た場合の関係部署の通報・連絡手順を整備。早い段階で感染拡大を食い止めるよう監視を強めている。10年前に重症急性呼吸器症候群(SARS)が大流行した広東省では、感染症研究の第一人者で、SARS流行時に医療指導にあたった鐘南山・広州呼吸疾病研究所長をトップとする対策チームを発足させた。

一方、江蘇省政府は5日、南京市の61歳の女性と79歳の男性が新たに感染していることが分かったと発表。他に2人に感染の疑いがあるという。また4日に感染が確認された浙江省湖州市の64歳の男性は4日夜、死亡した。これで5日夜時点で感染者は16人、死者は6人となる。

また香港政府は、3月に上海から香港に戻った7歳の女の子が「鳥インフルエンザに似た症状」を示していると発表。香港の病院で隔離のうえ検査したが、陰性と分かった。

今のところ、人から人への感染は確認されていない。上海では3日に死亡した52歳の女性の接触者が発熱を訴え、隔離されたが、上海市政府は5日の会見で、「H7N9型ウイルスには感染していなかった」と発表。上海で4日に感染を確認した4人の接触者119人については、この1人を除き「発熱や呼吸器症状は見られない」と強調した。

上海には5万6千人の在留邦人がおり、多数の日系企業も進出している。中国は6日まで3連休中で、現時点では「人から人への感染ではないので、事態の推移を注意深く見守りたい」(日系企業関係者)との声が多い。ただ今後の広がり次第では出張禁止などの対応を迫られる可能性がある。

中国当局も迅速な情報提供に努めている。上海市政府の鳥インフルに絡む記者会見は人への感染が確認された3月31日以降、4月2日、5日と2回。情報隠しの批判を受けた10年前のSARS流行時の教訓を意識しているのは明らかだ。今後はこうした取り組みが他の地方政府でも着実にこなせるかが感染拡大や混乱を防ぐカギとなる。

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