ベトナム、対ロシア協力強化 中国けん制へ海軍向け施設建設
【ハノイ=伊藤学】ベトナムが南シナ海で島しょの領有権を争う中国をにらみ、ロシアとの海軍協力を強化する。ロシアのショイグ国防相は5日、ハノイでベトナムのタイン国防相と会談。国防副大臣級会合の定期開催などで一致した。ベトナム南部のカムラン湾で、艦船の補修施設やロシア海軍向け保養施設を共同で建設することも決めた。
ショイグ国防相は4日からベトナムを訪問。サン国家主席(大統領)と会談したほか、冷戦時代に旧ソ連海軍が基地を設けていた要衝カムラン湾を視察した。タイン国防相は5日の記者会見で「ベトナムの港湾へのロシア海軍の寄港許可を早期に検討する」と話し、ロシアとの軍事交流を増やす考えを示した。
ベトナムは2009年にロシアから20億ドル(約1860億円)で「キロ型」潜水艦6隻を購入し、年内にも1隻目を配備する見通し。ロシアの協力を受けて、カムラン湾に潜水艦基地を整備するとみられる。ショイグ国防相は同日、「潜水艦乗組員の育成を支援する」と明らかにした。
中国が海洋監視船を配備するなど南シナ海への進出を強めるなか、ベトナムも対抗策を講じている。このほど農業・地方開発省水産総局の傘下に「漁業管理部隊」を設立。領海内で違法操業する中国漁船などへの取り締まりを強化する。罰金や禁漁措置のほか、海軍などと協力して強硬措置をとることも選択肢とする。
ベトナムとロシアの軍事協力は冷戦崩壊後に疎遠になったが、最近は再び活発化している。ロシアにはベトナムなど東南アジア各国との協力強化と、中国の勢力拡大を抑える狙いがあるようだ。