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中国軍、海洋・サイバー分野を強化 国防予算増

【北京=島田学】中国政府は2013年の国防予算を前年実績比で10.7%増やし、同国の国防費がこの10年で3.9倍に拡大することになった。共産党は20年までに中国軍を近代化する目標を掲げ「海洋」「サイバー空間」などの分野を中心に強化する方針。軍拡路線の継続には、新指導部を率い、軍からの求心力確立を探る習近平総書記の思惑がにじむ。

中国はこれまで、全人代開幕前日の記者会見で国防予算額を公表してきたが、今回は他の分野の予算とともに公表するとして4日の発表は見送った。増加傾向が続く国防予算ばかりに注目が集まることを嫌ったためだとみられている。

13年の中国国防費は米ドル換算で約1185億ドルと2年連続で1千億ドルを突破。公表ベースで世界1位の米国は13会計年度(12年10月~13年9月)の戦費を除く要求額は約5250億ドルで、中国が公表した国防予算はその約5分の1の規模だ。

国防費拡充の背景には国内の政治情勢の影響もうかがえる。今回の全人代を経て国家主席に就く習氏は政権基盤の早期安定を目指したいところ。国防費の増額要求に応じることで軍部への影響力を確固たるものにしたい考えとみられる。

陸軍中心だった中国軍の質的な転換を急ぐ意向もうかがえる。東シナ海や南シナ海など海洋上での周辺国との摩擦の増加や、サイバー空間という「新しい戦場」への対応もにらむものだ。温家宝首相の政府活動報告でも「海洋の総合的管理を強化し、国家の海洋権益を守っていく」と明記した。

具体的な動きでは昨年、制服組トップにあたる党中央軍事委員会副主席に初めて空軍出身者を起用。中国初の空母「遼寧」が昨年就役し、今年2月に山東省青島に専用軍港も設けた。海軍では空母開発の国産化、空軍では空母艦載機やステルス戦闘機開発など今後も大型プロジェクトが続く。

サイバー戦に投入する技術者も増え続けている。米国企業を狙ったサイバー攻撃への中国軍の組織的関与が疑われる一方で、中国国防省も同省や中国軍への外国発のサイバー攻撃が12年は月平均で約14万4千件発生し、うち6割超が米国発だったと主張している。

中国の継続的な軍拡路線により、沖縄県・尖閣諸島を巡る問題で対立する日本にとって脅威論は強まるばかりだ。尖閣問題を念頭に置いた中国軍による離島での軍事演習も増えたとされる。海軍艦隊が沖縄本島と宮古島の間を抜けて西太平洋に出る「列島線突破訓練」と呼ばれる軍事演習も昨年は7回実施。米国や日本などへのけん制を強めている。

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