深まる中東民主化の迷走 米の影響力低下、デモ・紛争やまず

2012/12/5付
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【カイロ=押野真也】中東各国の推進する民主化路線が迷走の色合いを濃くしている。エジプトでは初めて民意で選ばれたモルシ大統領が強権姿勢を強めたことに国民が猛反発。チュニジアやリビアなど独裁政権が崩壊した各国とも、安定にはなおほど遠いのが実情だ。米国の影響力が域内で低下したことも混乱に拍車をかけており、各国とも安定に向けた道筋を描けないでいる。

「アラブの春」と呼ばれる中東の民主化運動は、2010年12月17日にチュニジアで青年が警察官に抗議して焼身自殺したのが引き金になった。同国で起きた反政府運動が各国に波及し、チュニジアやエジプト、リビア、イエメンで相次ぎ独裁政権が崩壊した。

エジプトでは6月にモルシ大統領を選出したものの、現在は深刻な混乱に陥っている。直接の原因は11月22日に大統領が憲法令(暫定憲法に相当)を発布したこと。人民議会(国会)は解散中で、立法権と行政権を大統領が掌握している。憲法令では、大統領の決定を裁判所も覆せないと規定し、事実上三権を握る内容となっている。

革命を支持した若者やリベラル派は「独裁の再来」と猛反発。23日以降、数千人から数万人規模の反大統領デモを繰り返している。12月4日にもカイロ中心部の大統領府付近でデモが発生。大統領を支持するデモも起きている。

モルシ大統領の強権姿勢に対し、米国のクリントン国務長官は「権力の集中を招かないよう望む」と述べるなど懸念を強めている。ただ、エジプトは親米だったムバラク政権からイスラム原理主義系のモルシ大統領に変わり、過激な原理主義勢力も大統領を支持。米国はエジプトに影響力を行使しにくくなっている。

米国の影響力低下は、域内の政治力学を変えつつある。国連総会は11月29日に、パレスチナの同総会での地位を国家並みに引き上げる決議を採択。米国はパレスチナ側に決議案提出を見送るよう説得したが翻意させられず、決議には138カ国が賛成した。この動きにイスラエルは反発しており、パレスチナとの新たな火種となった。

イスラム勢力の台頭も域内各地に共通した現象だ。チュニジアでは厳格な原理主義勢力「サラフィスト」が、新憲法にイスラム法「シャリーア」の内容を反映させるよう要求。与党連合を率いる、穏健派イスラム政党「アンナハダ」はこの要求を拒否しており、両者の交渉が続いている。

シリアではアサド政権軍と同政権打倒を掲げる反政府勢力の内戦が1年9カ月も続いている。

ヨルダンでは、燃料への補助金削減を契機に、王制批判が噴出。イスラム勢力は「王制打倒」を公然と主張し、デモを実施。ペルシャ湾岸のクウェートでもデモが起きている。ヨルダンやクウェートのような親欧米諸国の安定が揺らげば、域内情勢がさらに複雑になる懸念も高まっている。

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