米、中国企業に厳しい目 SECが情報提供巡り監査法人告発

2012/12/5付
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【ニューヨーク=川上穣】米証券取引委員会(SEC)は3日、米証券取引法違反の疑いでKPMGなど四大国際会計事務所の中国拠点を告発した。米国上場の中国企業について監査情報の提供を拒否したとしている。米国では不正会計問題で、中国企業への不信感が強い。監査法人への強硬策を通じ、SECは国際資本市場に依存する中国への圧力を強める。資本市場における「米中摩擦」が鮮明になりつつある。

告発されたのは、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)、デロイト・トウシュ・トーマツ、アーンスト・アンド・ヤング(E&Y)、KPMGの四大会計事務所と、欧州系の会計グループBDO。いずれも北京や上海にオフィスを構える。

SECによれば、不正会計の疑いで調査中の中国企業9社について、監査を担当する大手会計事務所が監査調書などの提供を拒んだという。SECは各会計事務所への聞き取りを経て、具体的な制裁を検討するとしている。

米証券取引法では株式が米国市場で売買される外国企業について、海外の会計事務所でも監査書類を提出する義務がある。ただ中国の関連法では監査情報を外部にすべて開示することを認めていないとされる。

中国の反発も予想される状況でSECが強硬策に出た背景には、資本市場の構造変化がある。中国企業は大量のマネーが流れ込んだ2、3年前に比べ、中国における大型上場に陰りがみられる。経済の高成長を維持するためには、中国企業が長期的に国際資本市場での資金調達の道を探る流れは避けられない。

中国が世界的に信認度が高い国際会計事務所を締め出すなどの強硬策には出にくいはず。こうした事情を勘案し、SECは告発を通じ、中国により透明性の高い企業会計への移行を促したい思惑がある。

投資家保護に重きを置くSECには動かざるを得ない事情もある。米市場では不正会計の疑いなどで上場廃止になる中国企業が相次いでいるためだ。SECはこれまで違法行為などが明らかになった40社前後の証券登録を抹消。ニューヨーク証券取引所(NYSE)が上場廃止に踏み切るなど、厳しい処分が後を絶たない。

きっかけになったのは、カナダ・トロントに上場していた中国の木材事業会社、嘉漢林業国際(シノフォレスト)の不正会計事件だ。2011年6月に資産水増しの実態が明らかになり、株価が急落。米著名投資家のジョン・ポールソン氏が同社株の投資で巨額の損失を出したことでも話題を呼んだ。結局、今年5月に同社の株式は上場廃止になり、高い成長が見込めるとして米投資マネーが流れ込んだ中国企業への不信感を高める結果にもなった。

中国不信で、米中の資本市場では投資銀行の後退も目立つ。米メディアによれば、米独立系投資銀行ロス・キャピタル・パートナーズはこのほど中国での業務を大幅に縮小した。米投資家の中国企業への関心が薄れ、これまでのように中国企業を米市場に呼び込む業務の成長が期待できなくなったためだ。米市場における中国企業の新規株式公開(IPO)も下火になっており、金融市場における米中関係の冷却化が進んでいる。

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