2019年4月23日(火)

[FT]米国が苦悩する「世界の警察」という責務

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2013/9/4 7:00
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(2013年9月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

英国帝国主義の傑出した詩人ラドヤード・キップリングは1899年、米国にあてた詩を書いた。「白人の責務を担え」という書き出しで、「平和のために苛烈な戦に挑み/飢えた者たちの口を満たし/病の広がりを食い止めよ」といった言葉が連なっている。

米海軍の原子力空母「ニミッツ」。1日、同艦とほか4隻はシリア介入に備え、紅海へ移動を開始した=ロイター

米海軍の原子力空母「ニミッツ」。1日、同艦とほか4隻はシリア介入に備え、紅海へ移動を開始した=ロイター

今では米国の大統領は黒人であり、キップリングのような人が用いた帝国主義者の言葉をあえて使う知識人はいないだろう。しかし、米国は世界の警察官という特別な責務を担うべきだという考え方は今なお健在で、オバマ大統領がシリアに対する軍事行動を求めた発言にも見受けられた。

■脱帝国主義と取れる英の決断

「我が国はアメリカ合衆国である」。大統領はそう強調し、1945年以降の世界の秩序を構築・防衛するという特別な役目を担っていることを説いてみせた。

だが、米国は今でも世界の警察官の役目を担い、「平和のために苛烈な戦に挑」む準備ができているのだろうか。この問いは、シリアへの軍事介入を審議する米連邦議会に重くのしかかることになる。

オバマ氏自身のためらいと米国内の世論調査の結果が示しているように、多くの米国人は軍事介入にかなりの疑念を抱いている。シリアへのいかなる軍事介入にも加わらないという英国の決断も、この疑念をさらに強めることだろう。キップリングがこの世を去ってから80年近くたった今、多くの英国人は今回の議会の判断を、英国がついに、たとえ米国の保安官代理という立場であっても、世界の警察官であろうとする帝国主義後の本能から脱したしるしだと解釈している。

英国は世界で4番目に大きな軍事力を擁する国であり、国連安全保障理事会のメンバーでもあるため、世界の警察官を辞めるとなればその影響は世界に及ぶことになろう。しかし、仮に米国もそれと同様な道をたどるとなれば、世界を文字通り揺るがすことになる。

■弱まる経済に戦争疲れの米国

だが、それでもその可能性があることは明らかだ。イラクやアフガニスタンで戦争をしてきた米国は戦いに疲れており、経済も景気後退のために弱っている。シェールガス革命のおかげで中東への依存度はかなり小さくなっている。また、米国の国民はオバマ氏から一般市民に至るまで、自国の兵士が外国に出向いたら花束で歓迎されるなどという幻想をもう抱いていない。

むしろキップリングが例の詩で警告していたこと、すなわち「暮らしを良くしてやろうとすれば非難され/守ってやろうとすれば疎まれる」ことを予想するようになっている。

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