戦時中の強制労働訴訟、中韓元労働者が連携 日本企業に圧力

2014/4/2付
保存
共有
印刷
その他

戦時中の日本企業による強制労働を巡り、中国と韓国の元労働者や遺族の団体が2日、謝罪や損害賠償を求める訴訟で連携することを決めた。中国河北省の石家荘市で開いた会合で一致した。中国では2月からこうした対日訴訟が続いているが、同様の問題を抱える韓国との連携が表面化するのは初めて。世論への働きかけを通じ、日本企業への圧力を強めるという。

会合は河北に住む中国人元労働者の団体「三菱被害労働者代表団」が主催した。この団体は会合に先立ち、三菱マテリアルに謝罪や総額2億2700万元(約38億円)の賠償を求める訴状を河北省高級人民法院(高裁)に提出した。

原告は元労働者と遺族の合計で149人。中国では2月以降、北京市や河北の唐山市、衡水市で三菱マテなどへの提訴が続いているが、原告団の人数や賠償の要求金額で最大となる。法院が受理し、正式に裁判の手続きに入るかどうかは不明だ。

会合には、100人を超える元労働者や遺族が出席した。韓国からは「太平洋戦争被害者補償推進協議会」の代表らが参加。韓国での戦時中の強制労働の実態解明や被害者補償を実現するため、2000年に設立された市民団体だ。

韓国の元労働者が00年、三菱重工業を相手取って韓国で起こした損害賠償請求など一連の対日訴訟も支援している。張完翼(チャン・ワンイク)弁護士は「中国であれ韓国であれ、裁判を進めることは日本企業・政府への圧力になる」と連携の意義を強調した。

中韓の団体はそれぞれ自国で別々の裁判を進めており、両者の連携が法律上、直接の効果を持つことはない。中国側の陶泳弁護士は「韓国で成功した訴訟の経験は、我々の訴訟にも必ず役に立つ」と語った。

中国での強制連行を巡っては、北京市第1中級人民法院(地裁)が3月、北京在住の元労働者らの訴えを初めて受理した。元労働者や支持者には中韓連携でこの問題が国際的な広がりをみせていることを示し、訴訟を有利に進める意図がある。

一方で、韓国政府には、こうした動きが国内の強硬な反日世論を一段と刺激することへの懸念もあるようだ。韓国の元徴用工による損害賠償請求は、1965年の日韓国交正常化に伴う協定で「解決済み」というのが韓国政府の立場だ。

ところが、韓国の最高裁に相当する大法院が2012年に「個人の請求権は有効」と判断したことで新たな提訴が相次いだ。旧日本軍の従軍慰安婦問題で対日批判を繰り返す韓国政府も、強制労働訴訟の損害賠償請求については従来見解を覆すわけにいかず、司法との板挟みになっている。

韓国の原告側は日本企業が元徴用工らを支援する財団をつくるといった和解策を持っている。韓国政府もこういった妥協点を模索しているもようだが、韓国世論が対日強硬に傾けば政府の選択肢は狭まりかねない。

(石家荘=山田周平、ソウル=小倉健太郎)

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]