アップルが動画配信で攻勢 8カ国で映画、米ではTVも
接続機器で新モデル 音楽の成功生かす
【シリコンバレー=岡田信行】米アップルは1日、米国で1話0.99ドル(約83円)で視聴期限のある「レンタル」型テレビ番組のインターネット配信を始めると発表した。低価格のテレビ接続機器も投入する。アマゾン・ドット・コムなどが動画配信事業の強化をうかがう中、アップルは音楽で培ったコンテンツ(情報の内容)配信の基盤を活用して主導権確保を狙う。
サンフランシスコ市内で1日開いた音楽関連イベントでスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)が発表した。米メディアはアマゾン・ドット・コムも同日、配信するテレビ番組の価格を99セントに引き下げることを決めたと伝えた。
アップルが米国で配信する「レンタル」番組は米メディア大手ウォルト・ディズニー傘下のABC、ニューズ・コーポレーション傘下のフォックスが提供する。ネットDVDレンタル大手ネットフリックスの映画配信も利用できる。米、英など8カ国ではレンタル型の映画も配信するが、日本での展開は未定。
これに伴い、テレビ接続機器「アップルTV」では大きさを従来の4分の1、価格を1台99ドルと従来(229ドル)の半額以下とする新製品を発売する。0.99ドルで購入した「レンタル」番組は視聴期間が制限されるが、期限のない従来番組の配信も継続する。
携帯音楽プレーヤー「iPod」も「シャッフル」「ナノ」「タッチ」の3シリーズを刷新。「ナノ」には指で感覚的に操作するマルチタッチ画面を採用したほか、「タッチ」には両面カメラや無線LAN(構内情報通信網)経由でビデオ通話ができる「フェースタイム」機能を追加した。
販売価格は「タッチ」で記憶容量が最も少ない8ギガ(ギガは10億)バイトの機種が229ドル(日本での価格は2万900円)。1日から購入を受け付け、来週から出荷する。
iPodは累計販売台数が2億7500万台を突破し、販売台数の伸びは鈍化しているが、音楽だけでなく、写真や動画への対応を強化しててこ入れ、利用者が1億6000万人に上る音楽配信の仕組みを生かし、動画のネット配信で主導権確保を狙う。
ネット経由の動画配信は、機器の販売やソフト・サービス利用を増やしたい電機・IT(情報技術)大手と、新たな収益源を確保したいメディアが組んで事業参入・拡充する例が増えており、アップルの本格展開で競争がさらに激しくなりそうだ。