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「EU全域の銀行監督」 ドイツ連銀理事が表明

欧州委に近い案 非ユーロ圏も対象

アンドレアス・ドンブレット氏 米国生まれでドイツの大学卒業後、ドイツ銀行など国内外の民間銀行で勤務。2010年から独連銀理事。52歳。

【ベルリン=赤川省吾】ドイツ連邦銀行(中銀)は欧州で金融行政を一元化する際に、大手銀行だけでなく地域金融機関も含めたすべての銀行監督を集約すべきだとの考えを明らかにした。ドンブレット理事が日本経済新聞記者に対し、「(新しい監督機関に域内の)すべての銀行の情報を集約する」と語った。こうした独連銀案は、大手銀行だけを集約対象にすべきだと主張するドイツ政府と対立することになるが、欧州委員会の主流派の考えには近い。一方、東京の金融市場でドイツの外貨準備の運用を始めることも正式表明した。主なやり取りは次の通り。

――欧州では金融行政の一元化に向けた各国政府・中銀の駆け引きが始まった。将来の銀行監督の仕組みはどうあるべきか。独連銀はどんな案を主張しているのか。

欧州連合(EU)の欧州委員会は金融行政の一元化についての素案を(早ければ)11日に対外公表する準備を進めている。これは欧州で統一的な銀行監督制度を整備すべきだという6月29日のEU首脳会議の合意に基づいたものだが、それをどう実践するかはなお不透明。欧州中央銀行(ECB)がなんらかの役割を果たすことは明らかだ」

「独連銀は(国ごとに異なる)監督基準を一本化することは原則、賛成している。(ユーロ圏の銀行であっても)業務範囲はユーロ圏だけでとどまっていない。このため、さまざまな規制や基準がユーロ圏17カ国だけでなく、EU27カ国にすでに適用されている。(実際に危機が起きた場合は)連鎖反応がユーロ圏外にも広がるので、すべてのEU加盟国の銀行監督を統一すべきだと思っている。(ユーロ圏だけで銀行監督を一元化すれば)欧州統合が異なるスピードで進んでしまうし、それは望んでいない」

「域内のすべての銀行の監督を一元化することが必要だと考える。実務面では新しい監督機関が大手銀行だけを検査し、残りの中小銀行は引き続き個別国の監督当局が監視することになるが、必要なときにはいつでも、監督機関に(中小銀行を含めて)すべての情報を集約できるようにする」

「最終的な監督責任は必ずしもECBが負う必要はない。大切なのは銀行監督機関と中銀が緊密に連携し、頻繁に情報交換することだ。(独立した)金融政策を維持するため、最終的な監督責任はECBではなく、別の機関が持つことが望ましいと思っている。(ドイツ連邦金融監督庁の検査に、独連銀が協力する形の)ドイツがいい例となる」

――独政府は新しい銀行の自己資本規制(バーゼル3)の導入を閣議決定した。しかし民間銀行の一部には慎重論が残る。独連銀の立場はどうか。

「バーゼル3は欧州の法律に適合させるための準備を進めている。欧州議会、ユーロ圏財務相会合、欧州委員会の3機関が(導入に向けて)調整している。議論が終わっていないため、2013年1月1日に予定通り導入できるか不透明な要素も残っているが、仮に遅れたとしても13年上半期中には導入できるだろう。銀行が資本や流動性に余裕を持ち、銀行制度をより健全にすることに大きな意味がある」

――欧州では財政不安と銀行危機が共振している。どうやって悪循環を断ち切るのか。

「財政再建と構造改革が必要だ。成長を促し、将来の潜在成長力を高める。資金支援を受けた国は公約を守る。債務危機は、信認が欠如したからこそ起きた。それは公約をきちんと守ることでしか取り戻せない。アイルランドがいい例だ。厳しい改革をくぐり抜けた結果、まだ試験的だが、資本市場に復帰しつつある」

――スペインとギリシャの状況をどう見るか。

「ギリシャは危機の震源地でもあり、発信源でもある。(EU、ECB、それに国際通貨基金〈IMF〉の査察団である)トロイカとの公約を守ったかどうかを注視している。(トロイカはギリシャ政府と交渉中で、緊縮策を見直すかどうかは)その結果を待ちたい。スペインは状況が異なる。銀行部門は資本増強を迫られているが、すでに最大1000億ユーロ(約9兆8000億円)の支援を受けることが固まっている。今度はスペインが信認を得るように行動する番だ」

――ギリシャは低成長にあえいでいる。改革に耐えられるのか。

「合意したギリシャの改革案は数年間にわたるものだ。短期ではなく、長期的な目標だ」

――欧州各国は『財政再建と成長の両立』と口をそろえるが、その解釈は国によって異なり、足並みが乱れているとの印象を受ける。そう感じないのか。

「過大な債務を抱えないような財政政策に戻ることが望ましいとのコンセンサスが国際社会にある。これはドイツにもあてはまる。12年1~6月期の財政収支は小幅な黒字だったが、国内総生産(GDP)比の公債残高は80%を超えており、EUの財政協定の60%を上回る。少子高齢化が進んでいることを考慮すれば財政健全化路線を踏襲していくことが望ましい。(ほかより財政状況がいいからといって)ドイツは自己満足に浸っている場合ではない。ドイツは欧州経済の要であり、みんなの理想像でなければならない」

――債務危機が格付け会社によってもたらされたとの批判がくすぶる。

「格付け会社を巡る議論は重要な問題だ。しかし、単に格付けを否定するのではなく、過度に依存したり、疑いもなく信じたりするのをやめるべきだと考える。ソブリン(政府債務)の格付けについては、格付け会社は悪い情報を振りまくことはあっても、その情報の原因(となる財政赤字)を作っているわけではない。しかも、すぐに代替できるものは見つからない。それゆえ(格付け規制は)短期間に解決できる問題ではない」

――(ファンドなど)銀行以外の新しい形態の金融機関はどう規制していくのか。

「情報開示を進めてリスクがどこにどのくらいあるのかを見つけられるようにする。金融制度が崩壊するような危険ならば事前に予知できるようにする。これまで中央銀行は銀行の情報は持っていたが、(ファンドなどまでは)手が届いていなかった。その状態を改善するために、取引報告の義務付けなどのきちんとした制度を導入する必要があるかもしれない」

――東京市場で外貨準備の運用を始める狙いはなにか。

「独連銀は伝統的に国際情勢の分析を重視し、重要な金融市場には拠点を置くようにしてきた。(多くは)独政府の大使館や領事館に職員を派遣する形だが、ニューヨークと東京は別格で独立した事務所となっている。東京は1987年6月1日に当時の澄田智日銀総裁とペール独連銀総裁の合意で誕生し、今年で25周年を迎える。それを移転・拡張し、市場取引機能も加える。(独連銀の)日本での存在感を高める。危機だからこそ東京から直接、情報を入手することが重要だと考えているし、平時に戻ったとしても国外の経済情勢への理解を深めていくことが必要だ」

――なぜ中国やシンガポールではなく東京なのか。

「独連銀は主要20カ国(G20)参加国を現地で実感し、分析したいと思っている。これまでも日銀とは緊密に連携していることもあるし、円建て資産の運用に関しては東京に地の利がある。円は外貨準備として重要な通貨だとも思っている」

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