ロシア、勢力圏譲らず ウクライナ緊迫
親ロ住民の保護狙う

2014/3/2付
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 【キエフ=石川陽平】旧ソ連・ウクライナで起きた政変を機に、同国南端のクリミア半島情勢が一気に緊迫、ロシアのプーチン大統領は軍事介入を決断した。親欧米派の新政権に反発したロシアは大規模な軍事介入で、クリミアのロシア系住民の保護と権益確保に乗り出す構えだ。半島各地にロシア軍兵士と装甲車を大規模に展開。クリミアの事実上の分離・独立を狙う可能性がある。

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 プーチン大統領が1日、上院に軍事介入の承認を求めたのに先立ち、クリミア半島のクリミア自治共和国政府とロシアの黒海艦隊は同日、黒海艦隊の基地施設を共同で警備することで合意した。ロシア軍と自治共和国部隊による共同の軍事行動に正式に道を開き、ロシア軍が自治共和国内で合法的に展開できる根拠になるとみられる。

 ロシア軍による軍事介入への動きは加速していた。プーチン大統領は28日、メルケル独首相との電話会談で「これ以上の暴力の拡大があってはならない」と発言し、ウクライナへの関与を強める姿勢を示していた。

 自治共和国のアクショーノフ首相とロシア下院は1日、ロシア軍最高司令官であるプーチン大統領にクリミア情勢への介入を求めた。ロシア上院も同日、「ウクライナのロシア人を守るよう包括的措置を取るよう」大統領に要請。あとはプーチン氏が決断するだけだった。

 ロシア外務省も1日「未明に首都キエフから送られた正体不明の武装勢力が自治共和国の内務省ビルの占拠を試みた」と声明を発表。ウクライナの中央政府による挑発が緊張を高めているとの批判を強め、軍事介入に道筋をつけた。一方、自治共和国のアクショーノフ首相は1日、内務省や軍などの部隊や艦船をすべて親欧米派の政権から自分の管轄下に移すと発表した。

 ロシアが本格的な軍事介入の動きを見せるのは、ロシアの権益を守るようウクライナに圧力を強めるためだ。東・南部で多数派のロシア系や親ロ派住民の保護に加え、黒海艦隊基地の維持やウクライナを通る欧州向け基幹ガスパイプライン、ロシア企業によるウクライナへの投資の安全確保もロシアにとって重要だ。

 ロシアはウクライナの新政権が欧州連合(EU)と包括的な関係を強める連合協定の早期調印へ動き出すことをすでに念頭に置いているとみられる。ロシアにとって譲れない一線は、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟。欧米主導の軍事同盟にウクライナが加わり、NATOとの緩衝地帯がなくなることはどうしても避けたい。

 クリミアは1954年の帰属替えまでロシア領だった。軍事介入は、急進的な親欧米路線や反ロ政策を続ければ奪回も辞さないとの強い警告だ。プーチン大統領は自ら主導する経済統合「ユーラシア経済同盟」に、約4500万の人口を抱える旧ソ連第2の大国で、同じ東スラブ民族の兄弟国ウクライナが加わることが不可欠だとみなしてきた。

 ロシアは2008年夏、南オセチアなど親ロ派の民族地域を攻撃したグルジアと紛争を起こし、2つの民族地域の独立を一方的に承認。支援する分離・独立地域をテコに、親欧米派に転じたグルジアに影響力を行使してきた経緯がある。ウクライナでも同様に親ロ派の分離地域をつくり、親欧派政権に圧力をかけていく戦術とみられる。

 プーチン大統領には本格的介入を求める軍や保守層に配慮し、国内で「弱腰」批判が高まるのを避けたい思惑もある。クリミア問題を巡り今後、欧米がロシアに対し激しい批判を展開するのは確実だが、欧米との関係よりもロシア系住民や権益の保護、国内世論を優先せざるを得ない状況だ。

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