宗教で読み解く中東問題
戦後史の歩き方(9) 東工大講義録から

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2013/7/15 3:30
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日本経済新聞 電子版
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今回は、国際政治情勢でしばしば大きな問題となる「中東問題」の背景を宗教や歴史の側面から考えます。中東問題は別名「パレスチナ問題」ともいわれます。1947年(昭和22年)、国連総会がパレスチナをアラブ人国家とユダヤ人国家、そしてエルサレムを国際管理地区に分割する決議をしたことに始まります。イスラエル建国によってパレスチナに住んでいた多くのアラブの人々が難民となりました。あるいは、それを巡り周辺のアラブ諸国と対立し、大きなものだけでも4回の戦争が起きたのです。中東問題が解決しないために、今も様々な問題が起きているのです。

■2000年前にさかのぼる

パレスチナにはいまから2千年ほど前、ユダヤ人の王国が存在していました。やがてローマ帝国によって王国が滅ぼされます。その結果、ユダヤ人たちはこの地を追い出され、世界各地に離散していくわけです。このうち、欧州に行ったユダヤ人たちはキリスト教社会で大変な差別を受けました。

ユダヤ人はなぜ差別をされ、抑圧されてきたのでしょうか。イエスはユダヤ人で、ユダヤ教徒として生まれました。いわゆるユダヤ教の改革運動をしたことで、ユダヤ教の幹部たちににらまれ、十字架にかけられたのです。欧州諸国にキリスト教が広まると、自分が信じているイエス・キリストを十字架にかけたのはユダヤ人だという、ユダヤ人に対する反発意識が生まれていきました。

「新約聖書」にある4つの福音書のうちの一つの福音書にこういう内容が書かれています。当時、ローマ帝国から派遣されたピラトという総督は「イエスという人は心の清らかな人ではないか。この人を本当に十字架にかける必要があるのか」と疑問を抱きました。イエス以外にあと2人の罪人が十字架にかけられ、もう1人、イエスという名前の罪人がいました。「この2人のうち命を助けるとしたらどちらか」と群集に問いかけたら、「(後のイエス・キリストとなる)このイエスの方こそ十字架にかけて殺害すべきだ」と人々は言ったと書いてあります。さらに、「もしイエスを十字架にかけたことの責任が将来、自分たちの子孫に及ぼうともかまわない」と言ったというのです。後世になって、これを一つの根拠として欧州にいたユダヤ人たちは弾圧され、差別され、嫌がらせを受けることになってしまったのです。

中世の欧州キリスト教社会でユダヤ人が営んでいたいわゆる金貸し業は、働かないで金を貸して利子だけ取る浅ましい仕事として差別されていました。それでもユダヤ人たちは一生懸命働き、成功を収める人たちが出てきました。例えば、シェイクスピアの…

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