国立遺伝学研、長寿遺伝子の働きを解明
国立遺伝学研究所の小林武彦教授らは、長寿遺伝子とされる「サーチュイン遺伝子」の働きを解明した。酵母の遺伝子を操作することで、寿命を延ばしたり短くしたりすることにも成功した。同様の遺伝子は人間にもあり、老化の仕組みの解明や寿命を延ばす医薬品などの開発につながる可能性がある。米科学誌カレント・バイオロジー(電子版)に発表した。
生物の細胞にあるDNAは、体内に入った化学物質や外からの紫外線によって傷つくと、修復しようとする。しかし、修復を頻繁に繰り返すと細胞に負担がかかり、老化が進みやすくなると考えられている。
小林教授らは、細胞内でたんぱく質を作るリボソームの遺伝子に着目した。この遺伝子は修復が起こりやすいが、サーチュイン遺伝子が働きかけて過剰な修復を抑えることを酵母の実験で突き止めた。
遺伝子を操作してサーチュイン遺伝子が常に働く安定な状態にすると、酵母の寿命は通常の約1.5倍に延びた。一方、サーチュイン遺伝子が働かない不安定な状態のままだと、半分程度に縮まった。今後、詳しい仕組みの解明に取り組む。
サーチュイン遺伝子は人間など哺乳類にもある。その働きを強められるようになれば、人間でも老化を予防できる可能性があるという。