「東海」予知にも否定的 南海トラフ地震最終報告
内閣府の調査部会(座長・山岡耕春名古屋大教授)は28日、南海トラフを震源域とする巨大地震の発生について「確度の高い予測は難しい」とする報告書を公表した。震源域の一部がゆっくり動き始める前兆すべりを事前にとらえ、地震の時期や規模、地域を確度高く特定するのは困難と指摘。国内で唯一予知できるとしてきた東海地震を中心に進める防災対策が抜本的な見直しを迫られそうだ。
山岡座長は南海トラフ沿いの地震について「今まで東海、東南海、南海の3つの領域に分けてきたが、(地震のパターンは)多様性がある。東海を特別扱いするのはもはや科学的に十分な根拠がない」と語った。古屋圭司防災相は「南海トラフ全域を対象に議論していく必要がある」と述べ、政府内に議論の場を設ける考えを示した。
報告書は、プレート(岩板)境界で普段と違う変化が観測されたときには「地震が発生する危険性が普段より高まっているとみなせる」との立場を示した。ただ、南海トラフのどこで、どの程度の規模で起きるかなどの予測は難しいと結論づけた。
1978年に制定された大規模地震対策特別措置法では、東海地震に限って気象庁が2~3日から2~3時間前までに前兆すべりを観測し、首相が警戒宣言を出すことを想定している。
報告書は、予知の前提となる前兆すべりについても「十分な観測網がある地域は限られ、(過去に)確実な観測事例はない」とした。1944年の東南海地震の直前に前兆的な地殻変動があったとの考え方に対しても、データ不足から疑問を呈した。