分かりにくい原発の安全目標 背景に「ゼロリスク文化」

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2013/5/5 7:00
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「どれくらい安全なら、原子力発電所は安全といえるのか」。10年以上にわたって議論されてきた原発の「安全目標」が、4月10日の原子力規制委員会でようやく決まった。しかし公表された文書を見ても、安全目標そのものはどこにも書かれていない。10年越しで決めた重要案件にもかかわらず、結論はなかば封印するような異例の幕切れとなった。こうした結末に至った背景には、どんな議論があったのか。

原子力規制委員会の田中委員長

原子力規制委員会の田中委員長

安全目標とは、原子力発電所を利用することに伴うリスクを具体的に定めたものを指す。規制委や事業者が目指すべき目標でもある。規制委は10日、それまで4回の会合にわたって議論してきた安全目標を最終決定した。田中俊一委員長は「安全目標を持たない国は例外的に日本だけ。ようやく国際的レベルに近づいた」と胸を張った。

だが、規制委の文書には肝心の安全目標がどこにも書かれていない。事務局の原子力規制庁がまとめた文書のタイトルは「安全目標に関し前回委員会までに議論された主な事項」。何を決定したのかはこの文書を読んでもわからない。

文書を要約すると、(1)旧原子力安全委員会の報告書は議論の基礎となる(2)セシウム137の放出量が100テラ(テラは1兆)ベクレルを超える事故は原発1基あたり100万年に1回以下に抑える目標を追加すべきだ(3)安全目標は全原発に適用する(4)規制委は安全目標の達成を目指す(5)今後も安全目標の検討を進める――というものだ。

奇妙なのは(2)だ。目標を「追加すべきだ」と書かれているものの、どんな項目に追加したかは定かではない。

こうした文章になった理由について、規制委の関係者は「安全目標をどう定めるか、委員間で意見の隔たりが大きく、文書には残さないことになった」と明かす。その苦労の後が(1)の「議論の基礎となる」という表現に残っている。要するに「旧安全委の報告書にある安全目標をそのまま採用した」という意味だ。

しかし、記者会見で旧安全委の安全目標を採用したのかどうか田中委員長に尋ねたところ、「明示的には採用していない」との答えが返ってきた。一見矛盾するが、「明示的には採用していないが暗黙裏に採用したという趣旨の回答だ」と関係者は解説する。

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