沖合30キロの海水採取 放射性物質の調査海域拡大
政府・東電 「規制値超え」を懸念

2011/3/22付
保存
共有
印刷
その他

東京電力福島第1原子力発電所の事故による放射性物質の影響が広がり始めた。国の暫定規制値を超える放射性物質が検出された農作物が出荷停止になったほか、同原発付近の海水からも、国が定めた原子炉による汚染の上限値より高濃度の放射性物質が見つかった。いずれの値も、飲食して健康被害がすぐに出る量ではないが、国や東電は監視を強化する。文部科学省は22日、海洋研究開発機構の研究船舶を派遣した。

東電は福島第1原発1~4号機の放水口付近の海水を調査したところ、21日午後2時30分時点で高濃度の放射性物質を検出した。国の上限値に比べ、ヨウ素が126.7倍、セシウムが16.5~24.8倍だった。いずれも同原発の事故によって上昇したと考えられるという。

通常の原発運転時でも海水の放射性物質の調査は実施しているが、ヨウ素やセシウムが検出限界を超えて出ることは近年ではほとんどないという。

東電によると、空気中の放射性物質が雨で海に降下したか、原子炉建屋への放水が地面に染み込み、排水として海に流入したものと考えられる。ただ、原子炉からの排水系統は回復していないので原子炉から直接漏れたとは考えにくいという。東電は今後も調査海域を広げて影響を調べる。

文科省は海洋機構の学術研究船「白鳳丸」を同原発の沖合約30キロメートルに派遣した。海水を採取し日本原子力研究開発機構が分析する。

1~4号機の放水口付近で検出した放射性物質の測定値について、笠井篤・元日本原子力研究所研究室長は「ただちに海産物に影響が出るとは思えない」と話す。そもそも国の上限値とは、その濃度の海水を大量に1年間飲み続けたと仮定して、年間1ミリシーベルトに達する海水に含まれる放射性物質の濃度。年間1ミリシーベルトは一般の人が浴びる限度として国際的に認定されている放射線量だ。

海水を大量に飲むことは現実的でないほか、海では放射性物質は拡散しやすく、ある海域にとどまる魚介類などに影響は出にくい。笠井元室長は「ヨウ素は放射線量が半分になる半減期が8日と短いので、特に長期の影響は考えにくい」と語る。

一方、雨の影響も広がっている。文部科学省が全国47都道府県で雨やチリなどにくっついている放射性物質の量を調べたところ、北海道や中部・西日本ではほとんど検出されなかったのに対し、岩手県や山形県、茨城県、埼玉県などでは検出された。検出量は雨が降った20日から21日にかけて顕著に増えている。

文科省は「上空に漂っていた放射性物質が雨粒やチリ、ホコリなどにくっつき、地表付近に落ちてきた影響」とみている。人体への影響は放射性物質の量ではなく、それから出る放射線の量で評価する。同省の線量測定では、放射性物質が検出された一部地域での放射線量が一時的に上昇したが、ただちに健康に被害を及ぼすレベルではないという。

出荷停止になった野菜や牛乳で検出されているのは放射性物質。これらは原発の水素爆発や蒸気の放出などでガスに混ざって出てきている。そのまま風で拡散していくが、風向や風速などによって上空に滞留する地域もある。ここで雨が降ると地表に落ちてくる。

野菜についた放射性物質の除去は洗うかゆでるのが基本。学習院大学の村松康行教授は「キャベツなどは外側の葉につきやすいため、取り除けば問題ないし、野菜もよく洗えばある程度の濃度まで落とせる」と語る。

また、放射性物質は土の表面にとどまりやすく、短期的には根菜類への影響は少ないと考えられるという。牛乳で検出されるのは、乳牛が放射性物質がついた牧草や水を飲食するためで、1~2日で原乳に出てくる。

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]