トヨタ創始者の夢「佐吉電池」 新原理で目指す

2010/8/2 7:00
保存
共有
印刷
その他

トヨタ自動車が東京大学などと組み、未来の電気自動車に積む次世代電池の開発に乗り出した。キャッチフレーズは「佐吉電池」。トヨタグループ創始者である豊田佐吉が85年前に公募したが実現しなかった夢の電池のように、現在の電池をはるかに超える性能を目指す。

トヨタグループ創始者の豊田佐吉(トヨタ自動車提供)

トヨタグループ創始者の豊田佐吉(トヨタ自動車提供)

「石油にはいつまでも頼れない。日本の豊富な水資源を使えないか」――。豊田佐吉は水力発電で電気を作り、その電気で自動車を動かす構想を思い描き1925年、高性能な蓄電池の開発を公募した。懸賞金は100万円。当時の初任給は75円で、100万円は現在の100億円に相当するという試算もある。

佐吉が公募した電池の性能は「100馬力で36時間持続運転でき、重さ60貫(225キログラム)、容積10立方尺(280リットル)以内」。現在のガソリン車は1回の給油で約800キロメートル走れるが、佐吉が夢見た電池はそれをしのぎ、飛行機の動力源にもなるほどで、開発のハードルは極めて高い。

800キロメートルの距離を電気自動車が1回の充電で走るとなると、エネルギー密度は1キログラム当たり約500ワット時が必要になる。しかし、現状のリチウムイオン電池では同100ワット時程度で、研究が進んでも約250ワット時が限界と考えられている。ガソリン車並みの電気自動車を実現するには、新たな原理の電池が不可欠だ。

トヨタは佐吉の夢を温め続けてきた。2008年に立ち上げた電池研究部が、東大の水野哲孝教授のチームをはじめ、日本触媒、東北大学、産業技術総合研究所と共同で新型電池を開発する。具体的には、1価の陽イオン(カチオン)であるリチウムではなく2価のマグネシウムやカルシウムなどを使う「多価カチオン型電池」と、電解質に固体材料を用いた「全固体型電池」、空気中の酸素を利用する「金属空気電池」だ。

ただ、新物質を合成して電池を作り、安全性などを検証して製品化するまでにはかなり時間がかかる。例えば、金属空気電池では負極に金属リチウムなどを使うが、事故などで車体が損傷しリチウムが雨水などと反応すれば炎上する危険がある。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の開発ロードマップによると、新型電池の実用化は2030年ごろになりそうだ。

(科学技術部 川合智之)

保存
共有
印刷
その他

関連記事

日経産業新聞のお申し込みはこちら

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]