南鳥島沖に高濃度レアアース、中国鉱山の30倍超す
海洋研究開発機構・東大が発表
日本近海に予想以上に豊富な資源が眠っていることが明らかになってきた。海洋研究開発機構と東京大学の研究チームは21日、小笠原諸島・南鳥島沖(東京都)の海底の泥に含まれるレアアース(希土類)は、海底から浅い場所に最高で中国鉱山の30倍超の高濃度であることが分かったと発表。採掘する技術やコストに課題は残るが、国産資源が乏しいだけにメタンハイドレートなどと合わせ海洋資源に期待が高まる。
東大の加藤泰浩教授らの研究チームは昨年6月、日本の排他的経済水域(EEZ)の南鳥島沖の海底の泥に、レアアースの中でも特に希少でハイブリッド車(HV)のモーターなどに使われる「ジスプロシウム」が国内消費量の約230年分あると推定されると発表した。今回の調査で加藤教授は「230年分以上、数百年分埋蔵している可能性がある」と話した。
今年1月、海洋研究開発機構が深海調査研究船「かいれい」を使って同海域で調査。水深5000メートルを超える海底から採取した泥を分析した結果、レアアースが最大約6600PPM(PPMは100万分の1)の濃度で含まれていることが分かった。

ジスプロシウムは中国鉱山の32倍の濃度に上るという。高濃度であれば採掘コストも下がり、商用化の可能性が高まる。海底下3メートルと浅い場所にあることも判明した。
レアアースの生産は9割超を中国が占め、輸出規制による供給や価格高騰に不安がつきまとう。経済産業省は来年度から南鳥島沖の調査を本格化し、3年間で約40カ所を試掘する予定で、政府は商用化に向けた技術開発も急ぐ。
政府は今月12日、愛知・三重県沖の海底のメタンハイドレートから燃料用のメタンガスを取り出すことに世界で初めて成功。同沖合には日本の液化天然ガス(LNG)輸入量の11年分の資源量が確認されており、今回は事前の陸上実験の約9倍を産出した。
メタンハイドレートは日本海側の浅い海底でも確認され、比較的安く採取できる可能性もあるとして研究が進んでいる。
このほか新潟県佐渡南西沖では原油・ガスがたまりやすい地層を確認しており、石油と天然ガスの試掘調査が始まる。総額98億円を投じて埋蔵量などを調べるが、国内最大との見通しもある。
日本近海では、海底から噴出する熱水の金属成分が沈殿してできた海底熱水鉱床の探索も進む。銅や亜鉛、金、銀、ガリウムやゲルマニウムなどのレアメタルを含む「宝の山」だ。伊豆諸島や小笠原諸島、沖縄の近くに分布することが分かっており、比較的浅く分布するため技術的に有利とする見方もある。
ただ、いずれも現時点では採取コスト高が課題で、商用化には今後の技術革新が不可欠だ。新興国や途上国の急速な経済成長に伴い資源価格が急騰すれば、海底資源も現実味を帯びてくるとみて、米国やフランスなど海外でも海洋資源は注目されている。日本は領海とEEZを合わせると世界6位の海洋大国で、政府は海洋資源を効率よく探査し、安価に採取する技術開発を加速する。