原発、活断層の疑い相次ぐ 震災でリスク再認識
許認可時の不備問う声も
東日本大震災を受けた経済産業省原子力安全・保安院による原子力発電所の安全に関する緊急再調査の結果、見逃していた原発直下の活断層の疑いが相次ぎ浮上している。大震災を機に日本列島にかかる力が変化し、引っ張られて生じるタイプの活断層や、断層同士がつられて動く新たなリスクが浮き彫りになったからだ。電力会社や国による過去の調査・審査の不備を指摘する声も上がっている。

大震災は活断層のリスクを改めて認識する機会となった。今回の地震の揺れを分析した結果、これまでは安定して動かないと考えられていた断層が、活断層の近くにあると連動してずれ動く現象が確認されたからだ。
このため保安院による再調査では、原発直下だけでなく、近くにある活断層が原発に与える影響も詳しく調べ直している。原発下の断層が活断層に連動して動く可能性があれば地震で原発の建屋が大きく傾くリスクをはらむことになり、立地としては不適格となる。
また大きな地震によって日本列島にかかる力が変わったことも再調査の理由のひとつだ。両側から引っ張られてずり下がる断層(正断層)はこれまでは大きく動く恐れは少ないとみられていたが、震災以降は活断層として動く事例が多く見つかり、再検討の必要が出てきた。活断層を見つけ出す技術も向上し、専門家が洗い出した結果、見落とされていた活断層らしき断層が次々と見つかった。電力会社による活断層の再調査は数カ月かかるとみられる。
「いったいどこの調査会社が調べたんだ」。17日に開かれた専門家による意見聴取会で地震学者が声を荒らげた。北陸電力志賀原発(石川県)の認可(1988年)のため提出された資料には明らかに活断層を示すデータがあったという。原発認可に関する資料は、震災を受け昨年11月から再検討が始まった。原発増設の時代の通商産業省(当時)のおざなりな調査と審査が、震災を機に明るみに出た格好だ。
電力各社がこれまで耐震調査を怠ってきたツケが露呈した側面もある。保安院は震災前の2006年、原発の耐震設計に関する審査指針を改定し、耐震安全性評価の報告書を提出するよう電力各社に要請。活断層に対する備えも求めた。ただ電力会社による再調査は遅れ、審査を終えたのは東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の4基と日本原子力研究開発機構の高速増殖炉もんじゅだけだ。
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