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「はやぶさ」帰還 喝采の陰で忍び寄る「成果の風化」

日本に到着した「はやぶさ」のカプセルを収納したコンテナ(17日夜、羽田空港)

日本の小惑星探査機「はやぶさ」が月以外の天体に着陸して地球に帰還するという世界初の快挙を遂げ、日本中が沸いた。宇宙航空研究開発機構(JAXA)と民間企業で構成するプロジェクトチームは、相次ぐトラブルを独自の技術と知恵で克服し、喝采を浴びている。だが、はやぶさの後継計画は事業仕分けの影響などによりストップの状態。はやぶさで培った成果はすでに風化が始まっているという。

はやぶさは2003年、地球を出発。05年に小惑星「イトカワ」に着陸、イトカワの砂ぼこりなどの収集に挑んだ。13日、オーストラリア南部の砂漠にカプセルが落下し、17日には日本に"帰国"を果たした。

約7年、60億キロメートル余りに及ぶ長い旅路では幾多のトラブルに遭遇した。通信が約2カ月間も途絶えたり、新型エンジンであるイオンエンジン4台のうち3台が故障したり、満身創痍(そうい)の状態だった。

NASAの航空機から撮影した、大気圏に突入した「はやぶさ」。ばらばらになった本体とみられる多数の火の玉と、右下には分離したカプセルとみられる明るい点が見える(13日夜)=NASA提供

それでもプロジェクトチームはあきらめなかった。宇宙機構の関係者をはじめ、NECグループなどチームのメンバーは同機構・相模原キャンパス(神奈川県相模原市)の管制室を拠点に、通信を試み続けたり4台のエンジンで使える部品を連動させる"裏技"を駆使したりして、すべての難局を乗り切った。

カプセルは18日、相模原キャンパスに到着した。宇宙機構は半年かけてイトカワの砂ぼこりなどが入っているか分析を始める予定だ。

オーストラリア・ウーメラ近くの砂漠に落下した「はやぶさ」のカプセル(画面左側の丸い物体)とパラシュート(宇宙機構提供)
「はやぶさ」のカプセルを回収している様子(オーストラリア・ウーメラ、宇宙機構提供)

はやぶさプロジェクトは大成功といえるだろう。だが、米ロといった宇宙大国に先んじた技術やノウハウの維持・継承は危うい状況だ。

地球帰還の熱も冷めやらない16日、国の宇宙開発委員会は文部科学省(東京・霞が関)で、プロジェクトの責任者である宇宙機構の川口淳一郎・はやぶさプロジェクトマネージャから報告を受けた。「14日から管制室は真っ暗です。企業関係者もまったくいません」――。川口マネージャの説明を聞いていた委員会の委員たちは一様に驚いた。はやぶさが無事帰還したことで、はやぶさを操作した運用班は事実上、解散したのだ。「はやぶさで培った技術の風化はすでに始まっている」と川口マネージャは語る。

はやぶさの後継計画はあるにはある。だが、政府は厳しい財政状況から昨年の事業仕分けなどで後継計画を縮小。10年予算は3000万円で、後継探査機の製造には至っていない。ところが、菅直人首相は15日の国会で、後継計画の予算化に前向きな発言をした。一体、政府は後継計画をどう考えているのだろうか。

宇宙開発は1プロジェクトの予算規模が大きい。はやぶさプロジェクトも130億円を投じている。財政事情を考えれば、日本は取り組むべきプロジェクトを絞らざるを得ない。はやぶさの後継計画についても、中長期的な日本の宇宙開発戦略の中でどのように位置付ける考えなのか、政府はきちんと説明する必要がある。国民的関心の高さに任せて予算を増やすのでは人気取りにすぎない。

(科学技術部 新井重徳)

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