2019年2月19日(火)

太陽系の起源解明に大きな足がかり イトカワ微粒子
中島林彦・日経サイエンス編集長

2010/11/16付
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小惑星探査機「はやぶさ」の帰還カプセルから小惑星「イトカワ」由来の微粒子が発見された。「はやぶさ」が「イトカワ」に着陸した時、サンプル採集装置はうまく動かなかったが、舞い上がった塵(ちり)が採集容器に回収されている可能性があった。実際、帰還カプセルには微量の塵が入っており、それらを分析したところ、今回、「イトカワ」由来のものであることが判明した。小惑星は太陽系誕生初期の情報が保存されていると考えられることから、今回の微粒子の解析が進めば、太陽系の起源や進化につながる重要な手がかりが得られると期待されている。

太陽は誕生時、今ほど明るくなく、その周囲にガスや塵が集まってできた円盤、「原始太陽系円盤」が存在していたと考えられている。そして、原始太陽系円盤で多数の微惑星が生まれ、微惑星が集まって惑星ができたとみられている。

ただ、地球や火星など現在の惑星は微惑星が衝突・合体する過程で加熱され、物質がいったん溶融したため、原始太陽系の情報が失われている。一方、小惑星の多くは高温にさらされたことがなく、太陽系誕生初期の情報が比較的よく残っていると考えられる。

小惑星は火星と木星の間、太陽からの距離が2~3AUに多数集まり、小惑星帯を形成している。1AUは太陽・地球間の距離(1億5000万キロメートル)で、太陽・火星間は1.5AU、太陽・木星間は5.2AUだ。

小惑星には複数のタイプがあり、代表格がS型とC型、D型の3つ。S型は岩石からなり、小惑星帯の内側領域(太陽から2AU付近)で最大多数を占める。隕石の中で最も一般的な「普通コンドライト」というタイプはS型小惑星が起源だとみられている。C型は有機物と水を含んだ岩石からなる。小惑星帯の外側領域(太陽から3AU付近)で最もよく見られる。有機物を含む隕石「炭素質コンドライト」の起源はC型小惑星だと推定されている。一方、D型は小惑星帯の先、太陽から4AU以遠に存在する小惑星の最大多数派だ。

太陽からの距離によって小惑星のタイプの構成割合が大きく変わるのは理由がある。2AU付近では太陽光が強く氷が蒸発してしまうが、3AUになると氷は安定して存在し、もっと遠くになると、軽いガスも存在できるようになるからだ。こうしたことから小惑星の中でも原始太陽系の姿を最も色濃く残している小惑星はD型で、次はC型、そしてS型の順になると考えられる。

「はやぶさ」が訪れた「イトカワ」はS型。小惑星の中には数は少ないが、地球と火星の間を公転しているものがあり、「イトカワ」もその1つだ。「はやぶさ」は「イトカワ」上空から2カ月間以上、「イトカワ」を詳しく観測しており、その詳しい形状や密度などに関するデータを得ている。

今回、「イトカワ」由来と確認された微粒子の分析データを、そうした情報と総合することで、S型小惑星に関する知識が飛躍的に増えることになる。2011年度から「はやぶさ」後継機の「はやぶさ2」の開発がスタートする予定だが、ターゲットはS型よりもさらに原始太陽系の情報が残っていると考えられるC型。S型のことがしっかりわかっていれば、「はやぶさ2」によるC型の情報もより深い解釈が可能になり、それによって太陽系の起源と進化の謎解明がさらに進むことになる。

小惑星「イトカワ」由来と判断した微粒子の電子顕微鏡写真(JAXA提供)

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