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未知の素粒子を探せ 世界最大の加速器支える日本の技術

浜松ホトニクスや古河電気工業など

3月末、世界最大の加速器「大型ハドロン衝突型加速器(LHC)」(スイス・ジュネーブ)が本格的に稼働し、未知の素粒子を探索する実験が始まった。日米欧27カ国が建設に14年かけたLHCで存在感を示すのが、計測技術や超電導線材といった日本企業の最先端技術。浜松ホトニクスや古河電気工業などは、LHCを運営する欧州合同原子核研究機関(CERN)から表彰を受けた。探索に成功すればノーベル賞級の成果ともいわれるだけに日本の技術への期待が膨らんでいる。

日本チームが参加する検出器「アトラス」(提供:アトラス研究チーム)

「日本企業が作った計測機器なら安心だ」――。各国から集まったCERNの研究者らの間では"メード・イン・ジャパン"の機器類は大きな信頼を得ているという。

浜松ホトニクスは、LHCの建設に貢献したとして、これまでに4つの技術賞をCERNから贈られた。加速器の周囲に設置する4つの大型検出装置に使われる半導体検出器と、信号を増幅する光電子増倍管を開発、LHCに採用された。LHCで使われるほとんどの半導体検出器が同社製という。

同社の検出器の技術はもともと医療機器向けに開発したもの。血液検査や陽電子放射断層撮影装置(PET)に不可欠な計測装置向けの技術が、医療同様に高度の性能と品質が必要な物理実験でも役立った。

「浜松ホトニクスは素粒子実験に欠かせない存在」と、LHCの建設・実験にかかわる高エネルギー加速器研究機構の徳宿克夫教授は力を込める。素粒子実験は何年もかけて大量の計測データを蓄積して結果を出す。細かいデータの取得が結果を左右するだけに、高性能の検出技術がないと実験が成り立たない。

LHC建設に参加した主な日本企業
企業内容
加速器本体古河電工超電導線材(加速器の心臓部)
加速器本体IHI冷却装置(超電導状態をつくる)
加速器本体JFEスチール磁性を持たない鋼材
検出器浜松ホトニクス半導体検出器と光電子増倍管(検出器の心臓部)
検出器フジクラ光ファイバー

LHCは地下100メートルに建設した直径27キロメートルに及ぶ円形加速器。宇宙の誕生初期に近い、超高エネルギー状態を作り出せるのが特徴だ。物質が重さを持つ基になる未知の素粒子「ヒッグス粒子」や、暗黒物質の正体ともいわれる「超対称性粒子」をとらえることを目指している。

 具体的にはまず、加速器を冷却装置で冷やして超電導状態にして抵抗を減らし、加速器内部で陽子同士を高速で衝突させ、高エネルギー状態をつくり出す。この状態では、通常だと観測できない未知の素粒子も出現する可能性があり、それを検出器で観測する計画だ。

加速器には古河電工の超電導線材が活用されている(提供:CERN)

加速器の心臓部を担うのが、古河電工の超電導線材だ。これをコイル状に巻いて超電導磁石として使う。陽子を高速で飛ばすための超電導状態を保つ。同社も超電導線材の開発で表彰された。

大企業ばかりではない。精密機器メーカーの林栄精器(東京・豊島)は、日本などの研究チームが使う検出器「アトラス」の主要部品を開発した。ワイヤーチャンバーと呼ぶ、素粒子を検出する測定機器で、これまでの日本の加速器研究でも多数採用され、大学や研究機関から高い評価を受けている。

LHCは2008年9月に稼働したが、電気トラブルなどで一時停止。09年11月から再開し、徐々に衝突エネルギーを高めていた。今後は11年末まで7兆電子ボルトでの衝突実験を続ける。管理のための1年間の休止期間を経て、13年からはLHCの最高限度の14兆電子ボルトでの衝突実験に挑む。14兆電子ボルトでは高い確率でヒッグス粒子が見つかると期待されている。日本企業の機器類がいよいよ力を発揮するときが来た。

(科学技術部 長倉克枝)

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