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「幻の魚」イトウ、謎の生態に迫る 水温上昇で遡上活発に

国立環境研と米NGO、撮影に成功

国立環境研究所と米非政府組織(NGO)のワイルドサーモンセンターなど日米の共同研究チームは、日本最大の淡水魚で幻の魚と呼ばれるイトウ(サケ科)が産卵のために海から北海道の川に遡上(そじょう)してくる様子を撮影することに成功した。超音波の反射で物体を映像化する音響カメラを水中に設置した。水温が上がると遡上が活発になることも分かった。詳しい生態が謎に包まれている絶滅危惧種のイトウの保全に役立つ可能性もある。

川で泳ぐイトウのメス(向こう)とオス(手前)

研究チームには計測機器販売の東陽テクニカ、東京大学生産技術研究所、猿払イトウ保全協議会(北海道猿払村)も参加した。猿払川支流の上流で、水中音響カメラ「DIDSON」を使い観察した。この装置は米国製で、シロザケなど他のサケ科の観察実績がある。

イトウの通り道として造った魚道の出口付近にこのカメラを設置。超音波を扇状に出し、泳いでいるイトウに当たり反射した信号を拾って映像にする仕組みだ。尾びれを左右に振っている様子を連続して撮れるので、映像では上からイトウを撮影したように見える。川が濁っているときや夜間など光がない場合でも撮れる。

音響カメラがとらえた産卵のために遡上するイトウ(北海道の猿払川支流)

音響カメラがとらえた産卵のために遡上するイトウ(北海道の猿払川支流)

今年4月初旬~5月中旬にかけ、24時間態勢で観察した。約1カ月間で遡上したイトウは335匹に上った。水温がセ氏5度以上になり、太陽光が差す明るい日に遡上が集中しやすいことも分かった。研究チームは来年の遡上時期にも同様の観察実験をする計画。国立環境研の福島路生主任研究員は「遡上に適した条件などを見つけて保全に役立てたい」と話す。

イトウは成長すると体長1メートルを超える。小魚のほか時にはネズミやヘビも食べ、淡水の生態系の頂点に君臨する。しかしダムや農地開発などで堰(せき)が造られたり、川が直線になったりするなどの環境変化の影響で激減した。かつては北海道の40以上の河川や青森県、岩手県にも生息していたが、現在は北海道の11~12河川とサハリン、極東ロシア、千島列島の一部に生息するといわれている。川で生まれて一時期を海で過ごすが、何年で川に帰ってくるかなど詳しい生態はほとんど分かっていない。

(科学技術部 西村絵)

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