福島原発、最悪のレベル7 放射性物質を大量放出
経済産業省の原子力安全・保安院と国の原子力安全委員会は12日、東京電力福島第1原子力発電所の事故を原発事故の深刻度を示す国際評価「国際原子力事象評価尺度(INES)」で最悪の「レベル7」へ2段階引き上げたと発表した。レベル7は、過去に旧ソ連で1986年に起き、史上最悪といわれるチェルノブイリ原発事故しかない。東日本大震災で原発を安全に止められず、1カ月たっても復旧に手間取っていることが、事故の重大さを際立たせている。

評価尺度は原子力施設の損傷や外部に漏れ出た放射性物質の程度、被曝(ひばく)被害の大きさなどをもとに決まる。
保安院はこれまで福島第1原発1~3号機の事故をレベル5(所外へのリスクを伴う事故)と暫定評価していた。
安全委と保安院は福島第1原発1~3号機から大気中に放出された放射性物質の量についてそれぞれ推計した。放射性ヨウ素131換算で、安全委は大気中の観測結果から逆算して63万テラ(テラは1兆)ベクレル、保安院は原子炉の状態から37万テラベクレルと推計した。特に2号機で圧力抑制室の損傷が起きた3月15~16日に大量放出されたようだ。
レベル7は放出量が数万テラベクレル以上とされており、これを1桁上回ることなどがレベルの引き上げにつながった。
史上最悪とされるチェルノブイリ原発事故では520万テラベクレルとされ、同じレベル7でも放出量は約1割であると保安院は説明している。ただ、推計量はいずれも大気中への放出量だ。海水への漏出なども加えるとさらに放出量は上がる可能性がある。
国際評価尺度は、原発事故の深刻度を0~7の8段階に設定。過去の原発事故では、レベル5に米で79年に起きたスリーマイル島原発事故がある。99年のJCO東海事業所の臨界事故はレベル4だった。
福島第1原発は事故発生から1カ月が過ぎた12日現在も原子炉の安定停止の見通しが立たない状況。12日午前には福島第1原発の放射線量測定建屋で発煙があり、消火した。低レベル汚染水の排水も遅れており、2号機などにある高濃度の放射性物質を含む汚染水の移送作業は進んでいない。
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