2018年7月20日(金)

地震エネルギー「阪神」の178倍 威力想定外

2011/3/12付
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 東日本巨大地震の規模はマグニチュード(M)8.8と国内では過去最大。地震のエネルギーはM7.3だった阪神大震災の約178倍に達し、仙台新港など太平洋岸の各地には10メートル近い大津波が到来した。大揺れによる混乱に津波の猛威が追い打ちをかけ、近海を震源とする巨大地震の怖さを改めて見せつけた。

 今回の地震は規模が大きかったうえに震源が比較的浅く、津波を強める条件がそろった。震源周辺の地殻のずれが極めて広範にわたっているために海底の変化も大きく、津波の威力を増幅したようだ。

 一連の地震は地球を包むプレート(岩板)の境界域で起きる海溝型地震とその余震とみられる。こうした地震では、海底の地形が急速に変形することによって津波の発生を伴うことが多い。間瀬肇・京都大学教授によるとインドネシア・スマトラ沖地震に匹敵する規模の海水が押し上げられたと考えられるという。

 しかも震源の断層は東北地方の太平洋側の地形とほぼ平行に走っているため、津波が一気に岩手県や宮城県に押し寄せた可能性が高い。海洋研究開発機構の坪井誠司部長も「M8.8の地震なら10メートル近い津波が起きても不思議はない」と指摘。湾の奥など場所によっては、津波の高さが30メートルに達したところがあるかもしれないと京大の間瀬教授は予想する。

 津波はプレートのずれによって海底が盛り上がり、水深が深いほど邪魔されずに高速で伝わる。ジェット機並みの時速数百キロメートルに達することがある。津波は海岸に近づくと水深が浅くなるため一気に高くなる。速度は落ちるが、それでも時速数十キロメートル程度あり逃げるのは容易ではない。

 三陸沖のような狭い入り江や、遠浅の海岸といった地形の影響で陸の奥まで到達しやすい。京大の間瀬教授によると三陸のリアス式海岸のように湾の外側が広く内側が狭い「三角形の湾」では湾の内側に行くに従って津波が高くなりやすい。陸地が突き出た半島や島でも海底地形によっては津波が大きくなる。

 「地震で起きる津波は通常の波と全く異なる」と松山昌史・電力中央研究所上席研究員(津波工学)は指摘する。最大の差は、1つの波が岸から沖合までどれくらい続いているかを表す「波長」だ。台風などで起きる波の波長は100~200メートル。これに対し地震の津波の場合は数キロメートル~数十キロメートル。波は数十分~1時間押し寄せ続ける。

 このため波は岸壁で砕けて消えるのではなく、岸壁を乗り越えて内陸部にどんどん入ってきやすい。「波の高さ2メートルで木造家屋は全壊して流される」(松山上席研究員)ほど大きな力が働くという。数十分後、押し寄せた水が一斉に引き始める際にも被害を引き起こすことがある。

 海岸から離れていても、河川を水が逆流して上流地域で堤防を決壊させ予想外の被害をもたらす危険がある。膝くらいの高さの波でも足をすくわれるといわれる。今後、予想される津波の高さが数十センチメートルに下がっても警戒は解けないという。

 津波は地形の条件などによっては第2波以降が第1波よりも大きい場合もある。また1日程度続くこともあるほか、余震でも発生する。「決して自分で津波はもう来ないだろうと判断しないように」と京大の間瀬教授は警鐘を鳴らす。

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