2019年5月22日(水)

ノーベル化学賞に根岸・鈴木氏 有機合成で革新手法

2010/10/6付
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鈴木章・北大名誉教授(左)と根岸英一・米パデュー大特別教授(同大ホームページより)=共同

鈴木章・北大名誉教授(左)と根岸英一・米パデュー大特別教授(同大ホームページより)=共同

【パリ=古谷茂久】スウェーデン王立科学アカデミーは6日、2010年のノーベル化学賞を根岸英一・米パデュー大学特別教授(75)と鈴木章・北海道大学名誉教授(80)ら3氏に授与すると発表した。高血圧薬や液晶材料など多様な工業物質の製造に必須の合成法を開発したことを評価した。日本のノーベル賞受賞は08年の下村脩・米ボストン大学医学校名誉教授(82)ら4人以来2年ぶり。相次ぐ受賞で日本の基礎科学の底力を示した。

共同受賞するリチャード・F・ヘック米デラウェア大学名誉教授(79)ら3氏への授賞理由は「有機合成におけるパラジウム触媒クロスカップリング」。医薬品や電子材料など様々な工業物質を効率よく合成する革新的な手法である「クロスカップリング反応」を開発した。

社会や人々の暮らしは様々な工業物質に支えられているが、その多くは炭素が複雑に連なった骨格を持つ「有機物」。プラスチックも医薬品の多くも有機物の一種だ。だが、炭素を自在に操って目的の有機物を人工的に作るのは難しく、化学者にとって有機物の合成方法の確立は20世紀に入ってからも長く課題だった。

3氏は別々に1970年代、パラジウムという金属を触媒として混ぜることで2種類の有機物の炭素骨格をつなぎ、目的どおりの骨格の新しい有機物を得ることに成功。「鈴木カップリング」などと名付けられた。

この合成手法を利用すれば自然界にあるような複雑で様々な機能を持つ有機物を作れる。また、扱いが難しい有機溶媒でなく普通の水溶液中で反応が進む長所もあり、この手法は世界に広まった。現在は高血圧症や腎臓病の治療薬などの医薬品や農薬、液晶材料のような次世代電子材料の製造にも利用されている。

大学や企業の研究所など化学分野の基礎研究にも欠かせない重要な技術となっている。両氏の研究成果は他の日本人化学者らを刺激、有機合成は現在、日本のお家芸といわれるほど発展している。

同アカデミーが6日、発表後に開いた電話記者会見で根岸氏は「(知らせを受けて)非常にうれしかった。(受賞の)確信を持っていたわけではないが、周囲でそのようなことを言う人もいたので、来るかもしれないとは思っていた」と喜びを語った。また、同日夜、北大で会見した鈴木氏は「名誉ある賞をいただき、非常にうれしい。北大の多くの同僚や学生の真摯(しんし)な努力のたまものだ」と語った。

授賞式は12月10日にストックホルムで開く。賞金1000万クローナ(約1億2500万円)は3氏で分ける。これで日本のノーベル化学賞受賞者は7人。全分野では合計18人となった。

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