抗生物質が効かない細菌、酵素に原因 東大が解明
東京大学の若本祐一准教授らは、遺伝子に変化がないのに抗生物質が効かない細菌が一部存在する原因の一端をつきとめた。生き残る菌には、抗生物質の働きを高める酵素がほとんどなかった。結核などで抗生物質を投与しても治療が長引くのは、たまたま酵素ができにくい菌が一定の確率で現れるためという。感染症治療の効率化や新しい抗生物質の開発に役立つとみている。
多くの細菌で抗生物質を投与したときに死なずに長期間生き延びる菌が現れる。耐性菌のように遺伝子の一部が変化するのとは違い、研究は進んでおらず、仕組みはわかっていなかった。
研究グループは結核菌に似た細菌を使い、結核の治療で普及している抗生物質イソニアジドの効きやすさを調べた。イソニアジドが細菌を攻撃するときに必要なKatGと呼ぶ酵素が少ない菌が一定の割合で存在した。同じ遺伝子でも菌の形などの差が影響したとみている。
これまで、抗生物質が効かない細菌はゆっくりと増殖する特殊なものがわずかに含まれているためだと考えられてきた。今回の成果によって、70年近く信じられてきた仮説が覆される。