パラパラっとスキャン、書籍丸ごと電子化
大日本と東大、最速複写機 実現へ
大日本印刷と東京大学は新タイプの超高速デジタル複写機を実用化する。本をパラパラめくるだけで丸ごと複写できる東大の技術に、大日本の自動機械技術を組み合わせ、世界最速機を実現する。検索大手の米グーグルが絶版本を電子化してネットで公開するなど、古い書籍や資料を電子化する動きが急拡大している。大日本は2年以内に完成させ、著作権の切れた蔵書などの電子化を目指す図書館や電子書籍製作会社への販売などを狙う。
実用化する複写機のベースになるのは、東大の石川正俊教授らが開発した高速書籍スキャンシステム。高速撮影カメラと赤外線レーザー装置の下で本のページをパラパラめくるだけで全ページを読み取る。
ページをめくるときに生じる文字や絵のゆがみを赤外線レーザーでとらえ、1秒間に500~1千回撮影したカメラ画像と照合し、瞬時に補正する。これにより、1分間に170ページ程度を読み取れる。厚い本も複写できるという。大日本は本を傷めずにページを自動的にめくるロボットなどを検討し、東大の技術に組み合わせ2年以内に試作機を完成させる。

図書館の古い蔵書や著作権者の了解を得た書籍を電子化し、デジタル保存を進めたり電子書籍サービスを展開したりする動きが世界的に加速している。大日本は新型複写機ならば電子化の作業効率が飛躍的に高まるとみており、新型複写機を図書館、大学、電子書籍関連企業へ外販することや、自社の電子書籍製造・販売サービスに活用することを目指す。
書籍を高速に複写する装置は米欧や豪州の企業が開発しており、グーグルや電子書籍製作会社が利用しているという。ただ、いずれの装置も1分間に25ページ程度の読み取りが限度といわれ、文字や絵のゆがみの補正も難しく、より高速で正確に複写できる装置が求められていた。
東大のシステムは昨年夏に完成した。米国の学会で紹介され、世界の専門家が注目。国内外の企業が共同開発などを打診していた。
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