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テロ懸念、米政府が公表に「待った」

米政府が一時、河岡義裕教授らの研究論文の公表を見合わせるよう求めたのは、実験で作ったウイルスや詳細な研究内容がテロリストらの手に渡ると、殺傷能力の高い生物兵器につながると考えたからだ。今回の論文発表を巡る「騒動」は、急速に進展してきたバイオテクノロジーが、使い方を誤れば社会の脅威にもなるという「科学の功罪」を問題提起した。

鳥インフル論文を巡るこれまでの主な経緯
2011年秋河岡氏らのチームとオランダチームが英と米の科学誌にそれぞれ鳥インフルエンザウイルス変異の論文を投稿していたことが明らかに
12月米政府科学諮問委員会が生物兵器やテロに悪用されるとして発表前の論文に一部削除を求める
2012年
1月20日
世界のインフル研究者ら39人が、研究を60日間休止するとの声明
2月16、
17日
世界保健機関(WHO)が緊急会合を開催
4月20日米諮問委員会が論文削除要請を正式に撤回
5月3日河岡氏の論文が英科学誌ネイチャー(電子版)に掲載

一刻も早く研究成果を公表して、ワクチン開発などに取り組むべきだと主張する科学者らと、テロを恐れる米政府との考えは平行線をたどった。世界保健機関(WHO)が2月、打開策を探るため議論の場を設けた。ウイルスを外部に流出しないよう安全対策を徹底した上で公表するよう求め、4月下旬に米政府も正式に方針を撤回した。

3日の論文公表によって今回の騒動は一応、決着した形だが、テロへの脅威に対する不安が解消されたわけではない。

遺伝子改変技術が浸透し、比較的容易に病原体を操れる。バイオ研究が新しい治療薬開発など公衆への利益をもたらす一方、テロという大惨事を引き起こす道具にもなりうることを意識しながら、科学者らは研究に取り組まなければならない。

日本学術会議は9月をメドに、研究成果が悪用されないようにするための科学者らの行動規範をまとめる方針だ。

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