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福島第1、汚染水の新型浄化装置がフル稼働へ

東京電力福島第1原子力発電所の新型浄化装置「ALPS(アルプス)」で、今月中旬から下旬にかけ2系統が試運転を再開する。3系統すべてが同時に動くのは初めて。汚染水から放射性物質を取り除く作業が当初の計画よりほぼ1年遅れで本格化する。今年の夏以降、トラブルが続出し出口の見えなかった汚染水問題を、抜本的に解決する切り札になるのか。世界が注目している。

汚染水には63種類の放射性物質が含まれる。このうち水と分子構造が似ており、通常の方法では除去が難しいトリチウムを除く62種類について、検出限界未満まで濃度を下げるのが東芝製アルプス。専門用語では多核種除去装置と呼ぶ。

汚染水に含まれる放射性物質のうち、例えば、体内に取り込まれると骨に蓄積するストロンチウム90の濃度は1リットルあたり1億ベクレルだが、処理後の水は同0.1ベクレル以下に下がった。この濃度なら仮に漏れ出ても、海などが汚染されるリスクは大幅に下がる。

アルプスにはA、B、Cの3系統あるが、基本構造はどれも同じ。吸着塔が16個あり、活性炭や樹脂、酸化チタンなど7種類の吸着材を入れて放射性物質をこし取る。家庭の浄水器や工場の廃液処理装置と似た仕組みだ。

吸着材などは廃炉で実績がある米エナジーソリューションズ(ユタ州)と共同で開発した。吸着性能を上げるため、吸着を妨げる物質などを薬剤で沈殿させる前処理設備も加えた。

処理を重ねていけば吸着材には除去した放射性物質が高濃度でたまる。4カ月以内に交換しなければならない。使用済みの吸着材は米国で低レベル放射性廃棄物の最終処分に使われているポリエチレン容器に入れて保管する。年間800個ほど発生する見通しだ。

アルプスの処理性能は1系統あたり1日250トン。吸着材の交換などで1系統は止まっていることを前提に、平均1日500トンの処理を見込む。

現在、福島第1原発内のタンクにたまる汚染水は計35万トン。さらに地下水が流れ込んで1日400トンずつ増えている。

3系統のアルプスだけでは処理が追いつかず、たまった汚染水はなかなか減らない。東電はさらに装置を増設する。経済産業省も150億円を投じて新型アルプスを開発する。これらを合わせた処理性能は最大で1日2千トン。2014年度末までにすべての汚染水を処理し終える計画だが、ハードルは高そうだ。

東電は当初、アルプスの稼働を見込んでギリギリの汚染水タンクしか用意していなかった。試運転開始は当初、昨年末の予定だったが、原子力規制委員会が使用済み吸着材を入れる容器の強度が足りないと指摘、再検査で試運転が今年3月までずれ込んだ。

さらに試運転でも装置の一部が腐食して水が漏れたほか、取り切れない放射性物質が5種類あった。アルプスが稼働せず綱渡りの汚染水管理を強いられ、今も相次ぐ汚染水トラブルの引き金になった。

東電は今後、3系統の試運転を続けながら、処理方法を改善していく。本格稼働については規制委の認可が得られ次第、速やかに移行する考え。

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