京大、iPS細胞特許を米企業から無償取得
紛争を回避、再生医療で主導権確保へ
京都大学は1日、米バイオベンチャー企業アイピエリアン(カリフォルニア州)が持つ、人間の新型万能細胞(iPS細胞)の作製特許の権利を無償で譲り受けたと発表した。代わりに同社は京大特許のライセンスを受ける。特許紛争の回避につながり、国内の研究者らは安心してiPS細胞の応用研究に取り組める。京大は有力特許を手中に収め、新薬開発への応用などで主導権を握りやすくなる。

京大が譲渡を受けたのは、皮膚細胞などに3つの遺伝子を入れてiPS細胞を作る方法などの特許権。ドイツ製薬大手バイエルの子会社、バイエル薬品(大阪市)の日本人研究者が開発した。開発は京大の山中伸弥教授とほぼ同時期とみられる。日米欧に出願した特許の権利はその後、アイピエリアンに渡った。
一方、山中教授はバイエルに先だち類似の特許を出願。今回、これを含むiPS細胞関連特許をア社にライセンス供与する。米特許商標庁は双方の出願を受け、どちらに権利があるか審理に入る方針だったが、2年程度の期間と数億円の費用がかかるため京大とア社はこれを回避。ア社は創薬研究に資源を集中する。
京大はiPS細胞から様々な細胞を安全に効率よく作る方法などの特許も出願している。目的に応じて特許を組み合わせ、企業などにライセンス供与する方針だ。
隅蔵康一・政策研究大学院大学准教授は「十分な範囲の特許を押さえておけば(強い特許を持つ海外企業などとも)有利にクロスライセンス交渉できる」と指摘。国内製薬会社も「米社に巨額の特許使用料を支払う恐れがなくなり事業に取り組みやすくなる」とみる。ただiPS細胞を医療や創薬に応用する新技術なども各国が相次ぎ出願しているもようで、懸念が消えるわけではない。