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ネット通販、梱包で包む顧客の心

(村山らむね)

ネット通販では、ウェブ制作から広告まで様々なマーケティング企画開発がなされ、予算もかけられている。それに比べ見落とされがちなのが梱包だ。顧客にとって段ボールに入った商品を受け取るのは最もわくわくする瞬間であり、意外とストレスを感じたりもする。箱が大きすぎたり、ガムテープを爪でうまくはがしたりできなければ、ハサミやカッターを使うしかない。実際、そんな小さなイライラを経験した人もいるだろう。

(1)ネット通販で見落とされがちなひとつが顧客視点による梱包だ。
(2)理想の梱包は開けやすさ、中身の安心と安全、廃棄のしやすさにある。
(3)梱包状態の情報発信をおろそかにしないことが再注文につながる。
日本のアマゾンが発送する段ボール(左)と米アマゾンから送られる段ボール

顧客にとって理想の梱包とはどんなものだろう。3点あげたい。まず開けやすさ。大手モールは現在、注文から配送までの時間を競っているが、自宅に届いてから商品を手にするまでの時間を真剣に考えている会社は少ない。ほとんどが段ボールに強度の優れた透明テープを使っている。しかしこれだとハサミやカッターが必要だ。手元にハサミがないと、箱は届いても商品を手にできない。

例えばアマゾンの段ボールは薄いものであれば箱のヘリがファスナー状になっており、道具を使わず開封できる。大型の段ボールの場合は透明テープだが、箱の横の部分に三角形の切り込みがあり、指を入れればテープごと開封が可能だ。子育て中などでハサミを手の届くところに置けない家庭にとってはありがたい配慮だ。楽天の「ハウオリ」というショップでは、テープを長めに貼り先端の部分に折り込みが入れてある。そこを引っ張れば簡単にはがせるような、ちょっとした手間をかけている。利便性はもちろん、こうしたさりげない思いやりに、利用者はキュンとくる。

次に中身の安心と安全。当然だが中身が崩れていないことが何よりも重要だ。梱包材もごみが出るポリエチレン樹脂の緩衝材から、空気を入れるエアーパウチのようなものに変化している。

3つ目は廃棄のしやすさ。エコ意識の定着で段ボールは平らに分解して資源ごみとしてリサイクルに回す人がほとんどだろう。中身を守るためのテープの粘着力と、はがしやすさはトレードオフかもしれないが、そこまで考えた工夫があれば助かる。アマゾンの比較的小さいサイズの段ボールはテープがなく、糊(のり)だけなので分解もしやすい。

村山らむね氏 慶応大学法学部卒。東芝、ネットマーケティングベンチャーを経て、消費者目線のマーケティング支援のスタイルビズ設立。企業のソーシャルメディア運営やeコマース関連のアドバイザーを務める。経済産業省消費経済審議会など各種委員を歴任。ブログ「らむね的通販生活」(http://www.lamune.com)は18年目に突入した。働くママの目線での「ワーキングマザースタイル」(http://www.wmstyle.jp)を主宰。趣味はフラやヨガ、ホームパーティー。ファイナンシャルプランナーとしても家計相談を受け付けている。

さらに段ボールの大きさも最適化してほしい。小さな商品がとんでもない大きな段ボールで届くこともあるが、物流の現場で効率化するための結果なのだろう。顧客にとっての利便性とのバランスが必要だ。米国のアマゾンから注文すると、日本とは異なるしっかりとした黒いアマゾン謹製のテープが貼られた段ボールが届く。つまりあの行き届いた段ボールは日本オリジナルのようだ。日本の顧客の様々なクレームに真摯に向き合った成果かもしれない。

梱包状態という情報発信も大切だ。楽天のショップではどんな段ボールでどのような状態で届くのかを説明しているケースが少なくない。人気ブロガーは商品を紹介する際、段ボールに入った状態から写真を撮って丁寧に説明する。購入するときに「どんな状態で商品が届くか」は重要な情報なのだ。高額品やギフト、壊れやすいものであればなおさらだ。

井上誠耕園という小豆島のオリーブを中心としたショップの箱には、分解方法が印刷されている。内箱にはちょっとした企業メッセージも書かれている。届いてから箱を開けるときのわくわく感と、開けやすさのすいすい感。顧客が大切にされていると実感できる瞬間だ。デジタルだからこそ、唯一かもしれないアナログな瞬間も丁寧に。それが次の注文への力強いプッシュ通知にもなるのだから。


[日経MJ2013年6月7日付]
 「ECの波頭」は最新のEC事情を、専門家が読み解きます。執筆は、D4DR社長の藤元健太郎氏、通販コンサルタントの村山らむね氏、デジタルハリウッド大学教授の三淵啓自氏、アジャイルメディア・ネットワーク社長の徳力基彦氏が持ち回りで担当します。

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