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ネット選挙、有権者との「共闘」が焦点に

(徳力基彦)

選挙期間中のネット活用が解禁された初の国政選挙である参議院選挙が21日に終了した。現時点で今回のいわゆる「ネット選挙」がどうだったのか結論を出すのは早計と言えるが、一般的な印象からすると政治家側のネット選挙に対する盛り上がりに対し、有権者の反応は比較的冷めたものだったと言えるだろう。

《ポイント》
(1)初のネット選挙は、話題先行に終わったと言える。
(2)注目されたのはネット活用の成功例より、ミスやトラブルだった。
(3)今後は政治家のネット活用でなく、有権者のネット活用にも注目。

政治家によるソーシャルメディアの活用は明らかに活発になった。だが米国のネットユーザーの60~70%以上がフェイスブックのようなソーシャルメディアをアクティブに活用していると言われる半面、日本の利用率は20~30%程度とされる。日本経済新聞の世論調査でも投票に際し「ネット情報を参考にしない」との回答が81%という調査結果もあったし、まだまだ日本においてはソーシャルメディアを通じた新しい情報配信は主流になっていないのが実情だ。候補者の当落に関しても、ネットの活用度よりも、所属政党やテレビでの露出による知名度の方がはるかに影響していたように見受けられる。

一方で、ネット選挙に期待するあまりの候補者の勇み足の方が今回の選挙では話題になった。筆者も4月の「ネット選挙解禁――不慣れが生む負の面注意」というコラムで、ソーシャルメディアに不慣れな政治家によるミスやトラブルが起こると指摘したが、実際に多様なトラブルが話題になっていた。

東京選挙区に無所属で立候補していた山本太郎氏の陣営が、有権者の意思を確認せずに支援者からメールアドレスを収集してメールを送信して公職選挙法に抵触すると指摘されたし、届け出前の選挙活動や、候補者の選挙活動中の過激発言が問題視されるケースも多く見られた。

特に自民党ネットメディア局長である平井卓也議員自らが、ニコニコ動画の党首討論の中継会場で、他党の発言に「黙れ、ばばあ!」などと暴言を書き込んでいたのは実に皮肉な事例だと言えるだろう。結局、政治家視点でのネット選挙活用解禁について今回の参議院選挙では、ネット選挙解禁のメリットよりもデメリットの方が目立ったと言っても過言ではないかもしれない。

ただ、実はネット選挙解禁の本質は政治家のネット活用解禁ではなく、有権者のネット上での選挙活動の解禁の方にある。2008年の米国大統領選挙で無名の候補者だったオバマ氏が大統領選挙に勝ち残ることができた背景の一つには、オバマ氏が開設した会員サイトを通じ支援者をネットワークし、支援者がソーシャルメディアやメールを通じてオバマ候補を応援したり友人に寄付を依頼することを促したりする仕組みを構築したことが大きかったようだ。

今回の参議院選挙では野党が分裂し争点が曖昧だったこともあるし、オバマ大統領のように支援者をネット上で組織化することに大成功した事例を見つけることはできなかった。ただ、今回の参議院選挙はネット選挙が解禁されてから最初の選挙にすぎない。米国においてもネットが選挙結果に大きな影響を与えるようになるまでには4年以上の試行錯誤が必要だったわけで、日本もこれからオバマ大統領のような有権者と共に選挙を戦う候補が出てくるかどうかが焦点になるだろう。

日本の政治家が今回のネット活用の失敗を踏まえ、次回以降の選挙で有権者とうまく共創するネット活用・ソーシャルメディア活用に目覚めてくれることを期待したい。

[日経MJ2013年7月26日付]

 「ECの波頭」は最新のEC事情を、専門家が読み解きます。執筆は、D4DR社長の藤元健太郎氏、通販コンサルタントの村山らむね氏、デジタルハリウッド大学教授の三淵啓自氏、アジャイルメディア・ネットワーク社長の徳力基彦氏が持ち回りで担当します。

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