2位は大みそか 1年で最もお金を使う日は?
編集委員 田中陽
1年の中で、お財布からお金が一番たくさん出ていく日はいつか。そんな日を見つけることができるのだろうか。もしわかれば「THE DAY OF SHOPPING」と命名しよう。
2番目に多いのは大みそか

株価や為替相場などは日々刻々と変化し、しかもそれをリアルタイムで知ることができるが、消費活動はそうはいかない。スーパー、コンビニエンスストアなど小売業の売上高は公表されているが、毎日は発表してくれない。最近ではインターネット通販の買い物も盛んで、消費活動は捕捉しにくくなっている。でも、諦めてはいけない。総務省が実施している「家計調査」は調査協力者が毎日の買い物の中身をこと細かに答えている。その貴重なデータを調べてみると、「THE DAY OF SHOPPING」がわかるかもしれない。このほど2012年1年間の日々の買い物データがまとまったので紹介することにしよう。
最初に冒頭の疑問に答えてしまうのは芸がないので、1世帯あたりの消費支出金額が2番目に多かった日からお答えする。それは12月31日、大みそかだ。支出金額は11299円。2012年の一日平均の消費支出が6565円だから72%も多い。では、大みそかに何を買って(支出して)いたのだろうか。前日(30日)に比べて2.5倍に急伸したのは調理食品(1874円)。おせち料理を購入していたことになる。ガソリンなど自動車関連の支出も多い。
12月の日々の支出金額を見ていると月末になると支出金額が徐々に増加している項目があった。歯ブラシだ。月初に比べると月末は5割前後の伸びをしていた。おそらく年明けに新しい歯ブラシで新年を迎えたいという気持ちの表れだろう。スーパーの古参役員によると、かつて大みそかに肌着が飛ぶように売れていたという。やはり新年を新しい肌着でという心理が働いていたとみられる。
お金を最も使う日の理由は
では、3番目に消費支出金額が多かったのはいつか。11月1日だった。これは家計調査の対象世帯で住宅の大型のリフォームをしたとみられるため大きな数字となっていた。

そろそろ最もお財布からお金が出ていった日をお答えしよう。それは1月1日、元日だ。金額は14280円。読者の中には、「おかしい」と思われるかもしれない。大手スーパーやコンビニを除き、元日は多くの商業施設が営業していないはずだ。前日には、おせち料理も買ったり、作ったりしている。初詣で外出する機会もあり、郊外の大型ショッピングセンターに福袋をめがけて買い物に行くのだろうか。しかし、データを見ると被服などの支出はそれほど多くない。
実は元日で最大の支出項目は贈与金となっていた。金額は7605円で、支出全体の5割超を占めている。この日の贈与金の正体はお年玉に違いない。
日によって大きく異なる支出項目

今回、使用している家計調査の日別のデータは二人以上の世帯を対象としており、贈与金はお父さんやお母さんから子どもたちや親戚などにお年玉として渡された金額ということになる。贈与金だけでなく、こづかいという支出項目もあり、それらを合わせると9376円になる。家計調査ではお年玉やこづかいの使い道まで聞いていないからわからないが初売り、福袋、ゲームなどの消費に多くが回り、一部は貯金になっているのだろう。
2012年の支出金額トップ10をもうすこし見ていこう。5位にランクインしたのが4月1日。金額は10058円。詳細に見ていくと年度初めの特徴的な支出が跳ね上がっているのがわかる。文房具や履物といった支出も多かった。理美容関連の支出も多かった。この日は日曜日で実質的な新年度の初めとなる4月2日にむけてきれいに、こざっぱりしていたことがうかがえる。7位の1月2日は、被服の支出が跳ね上がる。これこそ初売りで福袋などを買い求める姿に違いない。
この10年で高まった「マッタリ感」
一般的に給料が出る月末になると財布のひもがゆるむと言われている。果たしてそうなのだろうか。10年前の2002年のデータと比較してみた。すると通年での支出金額上位20日のうち、25日から月末までの日は、02年には12日あったが12年は6日に半減していた。

日々の支出の凸凹は曜日や天候に左右されるから、移動平均(7日)でならしてみたのがグラフの折れ線だ。これをみると02年は月末になると支出が大きく増えていたが、12年は増えてはいるものの、10年前よりも跳ね具合が弱い。
またグラフ全体をみても消費の山と谷の差が10年前に比べて小さくなっているのがわかる。クレジットカードがいたるところで使えるようになり、給料が口座に振り込まれることを気にせずに買いたいときに商品を購入しているのだろうか。働き方も変わっている。給料日だけでなく、日曜・祝日などは消費が活発化すると言われてきたが、そうした通説は次第と薄れてきている。
消費にメリハリがなくなり、マッタリ感が漂う。消費活動が平準化することは、売り手側のマーケティングにも課題を突きつけている。

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