2019年9月23日(月)

電子書籍アマゾンの本質 消費者に新たな体験提供 (三淵啓自)

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2012/12/21 7:00
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三淵啓自デジタルハリウッド大教授

三淵啓自デジタルハリウッド大教授

米アマゾンが日本の電子書籍市場に本格参入し、実験的ではあるが電子書籍の価格も多様化し始めている。アマゾンの電子書籍といえば端末「キンドル」に注目が集まるが、その本質はエコシステムにある。アマゾンのエコシステムとはユーザー体験を中心に循環し、市場によって柔軟に変化する物販サービスだ。

アマゾンの電子書籍はパソコンやスマートフォン(スマホ)、タブレットでも自由に読める。仮にキンドルだけでしか読むことができなければ、市場の拡大は端末の売れ行き次第となる。しかしアマゾンは端末販売を目的にしない。消費者に新しい体験を提供し、その環境を支えるクラウドに裏付けされた、エコシステムを構築する。それで市場に革命を起こす考えなのだ。

《ポイント》
(1)アマゾンによる電子書籍革命の本質はエコシステムにある。
(2)エコシステムは新体験の提供と、オープンなクラウド型で成り立つ。
(3)日本も実体と情報技術を融合した技術革新で、産業構造の再構築を。

実際、電子書籍の利便性を実感し始めたユーザーが増えている。インプレスR&Dでは国内電子書籍市場は2016年度に2000億円と、11年度比3倍を予測する。一方、楽天の「コボ」は端末を購入しないと読めない。アンドロイド版も近日公開のままだ。端末を売ろうとしている時点で、アマゾンのユーザー体験とエコシステムには及ばないのだ。

かつて任天堂のファミコンやウィー、ソニーのウォークマンやPS3などが起こした市場革命も、ユーザーに未知の体験を与えることができたからこそである。当時はインターネットのような情報のプラットフォームはなかったため、デバイスの性能やソフト、コンテンツなどで勝負できた。それが日本の経済成長の原動力でもあった。

しかしながら情報革命により、巨大な情報と情報網に裏付けされたエコシステムが、革新的なユーザー体験を作り出している現在、そのエコシステムの構造をしっかりと踏まえなければ、日本の産業は一段と苦しい状況に追い込まれるだろう。

米国企業の強さは、エコシステムのアーキテクチャーが効率よく組まれている点にある。しかもオープンなシステムも提供する。例えばアマゾンのクラウドシステムは、アマゾンが競合するECサイトでも活用できる。言い換えれば巨大な情報エコシステムを、アマゾンはレイヤー(層)としてみているのだ。サービスで競合することがあっても、他のレイヤーが共有すれば規模が拡大し、お互いにメリットが生まれる。日本ではこうした認識がまだ浅い。

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