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ネット販売との対立越え 実店の役割「ハブ空間」に

(三淵啓自)

ここ数年、量販店や小売店舗と、電子商取引(EC)事業者との対立が激化している。インターネット販売やECに関しては、スマートフォンやタブレットの普及により、これまでパソコン利用者に限られていたサービスが急拡大した。

《ポイント》
(1)実店舗とEC事業者との対立には違和感がある。
(2)情報化社会の進展から、消費者行動や店舗の意義の見直しが必要だ。
(3)SNSは場と物と人を結びつけるためのコミュニティーに進歩する。

経済産業省の調査によると、国内の小売市場が横ばいにもかかわらず、BtoCのEC市場は、2011年の8.5兆円から14年には11兆円に達するとの予測もある。世界最大のEC事業者である米アマゾンは、情報端末キンドルを破格の値段で普及させ、端末の接続も無料化プランを打ち出し、人々の購買行動を実店舗から情報端末へと変え、米国ではウォルマートストアーズなどがキンドルの販売を中止する対抗策に出た。

さらにインターネットのソーシャルネットワークを活用して、人々を店舗に誘導するO2O戦略や、Webの特性を生かしたフラッシュマーケティング、顧客にゲーム感覚で来店を促すゲーミフィケーション、キャラクターやコンテンツなどを活用したストーリー戦略が進んでいる。ただ、戦略が多様・複雑化するとユーザー離れも起こす。

そうした中で、ローソンのソーシャルメディア活用が注目に値する。10年から開始し12年11月時点で、ツイッターが約22万人、ラインが約433万人、フェイスブックが約39万人。各SNSの特性を生かし、流す情報の内容や量を設計し、ユーザーに飽きさせない工夫をはじめ、ポイントやクーポンで来店を促している。一般的にSNSの活用はイベント性が高く短期的な効果は見込めても、安定した顧客やブランド構築に至っていない事例が多い。だが、ローソンでは企業キャラクター「あきこちゃん」を通して、キャラクターの制作やテーマソングを募集するなど、コミュニティー戦略をとっている。

しかしながら情報化社会を考えた時に、実店舗とECとの対立には違和感がある。実店舗の役割が変化しているからだ。ショールーミングにみられるように、消費者行動や、店舗の意義を考え直す必要がある。

小売業も商品の選択と受け渡しは店舗で行っても、決済は電子マネーやカード決済などの普及でEC化は加速している。今後ますます商品の選択をネット上でするか、受け取りを配送に任せるかは、消費者が自由に選択できるようになるだろう。実店舗が必要な商品もあれば、街としてショッピングを楽しむための店舗もある。店舗やモールは商品を見せるだけではなく、消費者を楽しませ、新しい体験を演出する劇場的ニーズが高まるであろう。

三淵啓自デジタルハリウッド大教授

SNSは仕掛けるものではなくなり、場(店舗)と物(商品)と人(ソーシャル)を結びつけるためコミュニティーとしてのブランディングにつながっていくのだ。近い将来、テレエグジスタンス(遠距離存在)遠隔操作ロボットを通して、商品や店舗を楽しみ、商品は配送システムや、仮想現実、超臨場感、3次元のシミュレーション技術で、実際の店舗にいるような体験をユーザーが味わえるようにもなるだろう。

拡張現実を使えば、実店舗で、顧客の求めている商品を自在に店内に並べることも、配置をユーザーの好みに変えることも可能になる。量販店がいつかはテーマパークのようになっていくかもしれないし、ソーシャルメディアのスタジオや、イベント会場などが併用されるかもしれない。店舗は人々の新しい体験や気づきのある空間として、また出会いやコミュケーションのハブへと変化する。

[日経MJ2013年5月17日付]
 「ECの波頭」は最新のEC事情を、専門家が読み解きます。執筆は、D4DR社長の藤元健太郎氏、通販コンサルタントの村山らむね氏、デジタルハリウッド大学教授の三淵啓自氏、アジャイルメディア・ネットワーク社長の徳力基彦氏が持ち回りで担当します。

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