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意外すぎた「あまちゃん」視聴率 梅ちゃん以下の謎

(徳力基彦)

2013年9月は、平均視聴率が20.6%で国民的話題となったNHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」と、最終回の視聴率が42.2%と平成の民放ドラマのトップを記録した「半沢直樹」により、久しぶりにテレビドラマが話題の中心に返り咲いた月だったと記憶されるだろう。

《ポイント》
(1)話題となった「あまちゃん」の平均視聴率は意外にも高くない。
(2)テレビ視聴はソーシャルと録画の影響が大きくなりつつある。
(3)テレビ番組の評価が生の視聴率だけで測れない時代に突入している。
「あまちゃん」はツイッターでも話題になった(岩手県久慈市のパレード)=共同

その余韻はその後のドラマにも好影響を与えているという分析結果も出ている。ただあまちゃんの平均視聴率は12年4~9月に放送された「梅ちゃん先生」の20.7%を超えることはできなかったという興味深いデータがある。梅ちゃん先生も話題のドラマだった。だが明らかにあまちゃんの盛り上がりの方が上回っているのに、この視聴率を意外と受け止める人は多いのではないだろうか。

そこで視聴率の数値と実感のギャップを埋めるヒントになるのが「ソーシャル視聴」と「録画視聴」だ。ソーシャル視聴はソーシャルメディアに投稿しながらテレビを見ることで、主にツイッターを使うことが多い。一人でテレビを見ている個人視聴に対し、ソーシャル視聴は一人暮らしの人でも他のソーシャル視聴をしている人と会話しながらテレビを見る感覚が味わえる。みんなでテレビに突っ込みながら見ることができる新しい視聴スタイルだ。

実際、NHKのコラムによると、あまちゃん最終回だった9月28日の関連ツイートは約6万9000件に上ったようで、他の番組と比べても活発にツイッターへ投稿されていたことがうかがえる。テレビ番組の感想やコメントをツイッターに投稿している人がそれだけいるということは、その人にツイッター上でつながっている友人にもその発言が見られているということだ。

このソーシャル視聴への期待は高く、10月9日には米ケーブルテレビのコムキャストが、ツイッターの投稿をクリックすると自動的にテレビが起動してその番組を視聴できるサービスを発表した。

徳力基彦氏 1972年生まれ。95年NTTに入社し、法人営業などを担当。2006年のアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの1人として運営に参画。「カンバセ-ショナルマーケティング」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用について指南する。09年から社長を務める。ブログ以外にも執筆や講演を精力的にこなす。11年の登壇回数は100回を超えた。政府広報アドバイザーなど幅広い啓蒙活動を展開する。著書に「デジタル・ワークスタイル」などがある。

 あまちゃんの場合、仮に6万9000件の投稿が2万人によってなされていたとする。1人のツイッターユーザーに100人の友達がいるとすると、その発言は200万人に見られている可能性がある。ソーシャルメディア上でのあまちゃんについての視聴者同士の会話はフェイスブックやラインでも発生していたとみられ、それらの発言がテレビをリアルタイムに見ている人の数以上に、あまちゃんの話題を届けていたことになる。

さらにソーシャルメディアの友人経由であまちゃんの情報を受け取った人たちは朝ドラを見ていない層も多く含まれる。こうした人たちは当然、あまちゃんを録画して放送時間外に視聴する。現在公表されている視聴率データは、ビデオリサーチが実施しているもので、リアルタイムに視聴している人しか含まれない。ソーシャルメディア上であまちゃんの話題に触れ、気になって録画して、深夜や週末に視聴している人は視聴率に含まれないわけだ。

あまちゃんの録画視聴率は公表されていないのであくまでも推測だが、こういった公表されている生での視聴率と、録画も含めた視聴率の乖離(かいり)が進んでいる指摘は、テレビ関係者からもよく聞かれる。特にドラマのようなコンテンツ価値が高いものはその傾向が強いようだ。

米国では調査会社のニールセンが、ツイッター上のツイートに基づいて番組ランキングを発表し議論を呼んでいるようだ。日本でも10月1日からビデオリサーチが録画視聴率調査を本格的に開始するという。テレビ番組の価値は、生の視聴率だけでは測れない時代に突入しつつある。

[日経MJ2013年10月18日付]

 「ECの波頭」は最新のEC事情を、専門家が読み解きます。執筆は、D4DR社長の藤元健太郎氏、通販コンサルタントの村山らむね氏、デジタルハリウッド大学教授の三淵啓自氏、アジャイルメディア・ネットワーク社長の徳力基彦氏が持ち回りで担当します。

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