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ローソンの白井さん、任せて育つヒットメーカー

(藤元健太郎)

藤元健太郎D4DR社長

日本アドバタイザーズ協会の「Web人大賞」をローソンの白井明子氏が受賞した。ローソンは常に先進技術やサービスを取り込み、結果を出してきている。それを実現しているのは白井氏の活躍抜きには語れない。フットワーク軽く社外に人脈を築き、複雑な調整を行う白井氏のスピード感は他の企業から見ると信じられないかもしれない。

失敗もある。箱根でのエヴァンゲリオンのAR(仮想現実)企画はトラブルで2日間で中止した。しかし、リスクも織り込んだ上で、上層部から全面的に仕事を任されている白井氏の能力と、それを発揮させるローソンの社内風土こそが、今のローソンのWebマーケティングにおけるポジションを築いている。

《ポイント》
(1)「俺に分かるように持ってこい」は最も使ってはいけない言葉。
(2)部下の力量を見極めた上で、仕事を任せることが大切だ。
(3)若手は自分の上司以外の経営層を味方にする努力を。

筆者がこの連載で「LINEだ!」「O2Oだ!」と声を大にしている点について、日本企業が実行に移す際、予算ではなく、人材や組織の問題が障害になるのではないだろうか。

Webマーケティングの世界は動きが速い。テストトライアルをマネジメント層に提案しても「よく分からない」と放置されたり、「投資対効果を出しなさい」と言われて担当者が鉛筆をなめてマネジメント層が喜びそうな数字を作ることになったりする。こうした状況を生み出さないためのマネジメント層のあり方は以下の2通りしかないだろう。

(1)部長クラスがプロフェッショナルになる――。欧米の管理職はそもそもその業務の専門家であることが多い。部下が出してきた計画書を即座に判断し、ダメだしや修正ポイントを的確に指摘できる。日本ではまだこうした人材は少ない。社内ローテーションでたまたまマーケティング部門に来た人は、部下の意見よりも広告代理店の言う通りになってしまうことも多々あるようだ。

ただ、日本でもようやくプロフェッショナルが少しずつ生まれてきている。日本コカ・コーラのネット上でのプラットフォーム構築を成功に導いた江端浩人氏は商社を経たITベンチャーからの転職組。つい先日、日本マイクロソフトのマーケティング本部長に転職した。専門家の流動化が進みつつある証左といえる。

ローソンは常に先進技術やサービスを取り込んできた

 (2)部下の業務遂行力を判断し、任せる――。(1)の取り組みが難しいとすると、マネジャーの役割は中身よりも専門性のある若手たちを使いこなす能力である。「俺に分かるように持ってこい」は最も使ってはならない言葉だ。自分の知識レベルに企画をあわせることになり、つまらない提案になってしまう。

企画の内容は詳しく分からなくとも、プロジェクトの計画性やリスクの大きさを判断することはできる。リスクが小さい範囲でどんどん実行し、ノウハウをチームに身に付けさせることも有効だ。「iモード」をけん引した転職組の夏野剛氏が活躍できたのも、上司が組織の中で彼を守りつつ、どんどん任せたことが大きかったといわれている。

Web人大賞を受賞したローソンの白井氏

企画を成功に導くには、アイデアを生み出す「アイデアジェネレーター」、アイデアを育てる「アイデアプロモーター」、つまらないアイデアを殺す「アイデアキラー」のバランスが大事だ。Webマーケティングの世界ではアイデアジェネレーターが組織の中で力を持っていることは極めて少ない。会議室ではアイデアキラーが最大勢力だろう。

日本のマネジャーや経営層は積極的にアイデアプロモーターになることを意識し、時にアイデアキラーから若手を守る。若手は直属の上司以外の新しいもの好きの経営層を味方につける。筆者も使った作戦だ。日本の多くの企業に第2、第3の白井氏が登場することを切に願う。

[日経MJ2012年9月12日付]

 「ECの波頭」は最新のEC事情を、専門家が読み解きます。執筆は、D4DR社長の藤元健太郎氏、通販コンサルタントの村山らむね氏、デジタルハリウッド大学教授の三淵啓自氏、アジャイルメディア・ネットワーク社長の徳力基彦氏が持ち回りで担当します。

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