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斉藤日本取引所CEO「アジアの成長、日本が起点」(金融力シンポ)

日本では需要不足や税収の低下、高齢化などいろいろ言われるが、いずれ他の先進国でもあらわれる問題だ。今後は、これらの問題に対し賢明な対症療法を用意しているかどうかで、国の富や文化水準の差が出てくるとみる。

アジアの成長の裏をつぶさにみると、日本の大企業だけでなく中小企業の優れた技術の支援により支えられていることが分かる。これがなければ、アジアの成長はなかったと思う。

日本取引所グループCEO・斉藤惇氏(さいとう・あつし)  1963年に入社した野村証券では米国勤務が長かった。95年に副社長。98年に野村を退社した後、産業再生機構社長などを歴任。07年に東京証券取引所の社長に。大証と経営統合し日本取引所グループを発足させた。

もし日本がこの20年間、3%程度の国内総生産(GDP)成長率を保っていたら、産業技術だけでなく先進国型の金融制度を利用した質のいい資本の提供先として、アジアの重要なパートナーになったはずだ。

今後、日本が知恵と努力を重ねて賢明な施策を遂行していけば、日本の経済的な位置を転換できる。

株式市場の健全な拡大や育成は、資本価値の認識を高める重要なカギだ。日本の経営者が、資本収益の改善という基本的な問題に真摯に取り組めば、長いデフレを転換させるきっかけになる。デフレに陥った原因を20年前にさかのぼれば、経営者の資本コストの認識が甘かったためだ。

資本コストに目をつぶり、国際競争力がなく行き詰まった企業に対し、金融機関が融資し国の資金を投入してきたことが、デフレの病巣だ。上場企業の投下資本に対する収益率が改善し、経済成長と相まって大きなキャッシュフロー(現金収支)を生む状況が求められる。

ゴールドマン・サックスのリポートによると、全世界の株式市場の時価総額は47兆ドル。このうち、新興国の株式市場は31%しかない。だが、2030年には、世界の市場規模が3倍になり、うち新興国だけで55%を占めるという。この激変を、国家戦略としてぼうぜんと見送っているわけにはいかない。

 アジアには東京、シンガポール、香港という3大市場が現在は存在する。いずれ上海、ソウル、ジャカルタ、ムンバイ、シドニーなど多くの市場が林立してくる。こうしたなか、日本のマクロ経済が回復して成長し、資本を創出する力をみせなければならない。

日本は昨年、約50兆円近い医療介護予算を投入した。お金が投入される医療や医薬品、介護などの産業が効率よく機能すれば、新しい成長産業となるはずだ。お金が社会で循環し成長産業が育成されれば、日本取引所グループはアジアの金融センターとして影響を及ぼし始める。

現物の株式市場では、上場企業の収益性やコーポレートガバナンス(企業統治)の質を打ち出す。デリバティブ(金融派生商品)では海外商品の導入など品ぞろえの拡充を積極的に進めて流動性を高め、日本経済のアジアでの地位を高めていく。すでに決済・清算業務では、金利スワップの分野でロンドンに次いで世界2位だ。まさしくアジアナンバーワンの機能だ。

会計問題などが影響してニューヨーク市場では多くのアジア株が上場廃止になった。投資家はアジア株の保有シェアを縮小し、日本株のシェアを上げている。日本株を通してアジアの成長を取り込む動きに変わっている。日本の市場を透明性の高い国際ルールを共有する市場にすれば、必ず質の高いお金がやってくる。

成熟した日本市場で大事なことは、既存の価値観や既得権を破壊する元気な新規企業の連続的な登場だ。米国市場ではわずか25年で、S&P500種株価指数の採用銘柄のうち340社が入れ替わった。アジアで日本取引所がこのようにダイナミックな市場に変わらないと消滅するだけだ。若者のチャレンジを喚起し誘致することは日本取引所の成長の基礎である。

アジアで130年の歴史をもって欧米流のルールで資本市場を運営してきた国は日本しかない。長期で見るとコストのかかる自主規制部門が保証する質や透明性の高さが、きっと市場の価値になる。自主規制をしっかりやることが、東京金融市場が評価されるもとになる。

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