食品ブランド「選択と集中」 アサヒ、カルピス買収
「定番」獲得へ1000億円

2012/5/8付
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アサヒグループホールディングスは8日、カルピスを買収すると正式に発表した。10月1日付でカルピスの親会社である味の素から、全株式を約1000億円で取得する。飲料業界では過去最大のM&A(合併・買収)で、アサヒの飲料事業は業界3位に浮上。グローバル競争を勝ち抜くため、食品大手が傘下ブランドを入れ替える新しい再編が始まる。

カルピスはアサヒの持ち株会社の傘下に入り、当面はアサヒの清涼飲料子会社、アサヒ飲料と合併しない。商品開発や物流・原料調達の連携で相乗効果を追求する。味の素はカルピスから配当金で250億円以上を、アサヒから約1000億円を受け取る。

「カルピスのブランドは魅力的。一緒にやりたいと思った」。8日の記者会見でアサヒの泉谷直木社長は買収の意義を強調。「生き残るには各カテゴリーでナンバー1、2のブランドを持つかどうか」と述べた。

酒類事業が成熟するなか、海外展開と並ぶアサヒの多角化の柱である清涼飲料事業。ただ業界で「メガブランド」と呼ばれ、「スーパーの売り場から外れない定番商品」(業界関係者)である3000万ケースの年間販売量をクリアするのは、「三ツ矢サイダー」と缶コーヒーの「ワンダ」だけ。首位のコカ・コーラグループは「アクエリアス」「ジョージア」など8つ、2位サントリーは「ボス」「烏龍茶」など5つを抱える。

次々と新商品が出る日本の飲料市場でメガブランドを育成するのは難しく、実際上位商品は20年以上たつロングセラーが中心だ。アサヒはカルピスと2007年に自販機事業を統合。それ以来、90年の歴史を持ち、乳酸菌飲料では他の追随を許さぬメガブランド、カルピスの買収へ向け「味の素にラブコールを送ってきた」(アサヒ幹部)。

昨年、交渉は現実味を増す。7年に及ぶビール系飲料の縮小に直面していたアサヒは、持ち株会社へ移行、本格的にM&Aを推進することを掲げる。12月、業界団体の会合で顔を合わせたアサヒの泉谷社長と味の素の伊藤雅俊社長の話題は、カルピスに及んだ。今年1月、アサヒは正式に買収を提案、「あとは伊藤社長しだい」(関係者)と味の素の決断を待つことになる。

「カルピスは乳性飲料で断トツのブランド」とアサヒの泉谷社長(右)は強調した

「カルピスは乳性飲料で断トツのブランド」とアサヒの泉谷社長(右)は強調した

オセアニアなどで昨年、買収を実施したアサヒだが、買収価格の指標となるEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)倍率が10倍を超えるものが大半。カルピスの現預金部分を除く事業の正味価値への対価は840億円。カルピスのEBITDAは約90億円で、買収価格は約9倍。内外の市場成長率の違いを考慮しても、買収価格は妥当と関係者は評価する。

泉谷社長はさらなる再編について「ブランドポートフォリオの強化というテーマであれば、検討したい」と話す。国内基盤の強化はそのまま海外での競争力につながる。

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