オリンパスが損失隠し 含み損、買収資金で穴埋め
90年代から
オリンパスは8日、問題になっている過去の企業買収で支払った多額の報酬や買収資金が、同社の証券投資の損失を解消するために使われていたと発表した。1990年代に含み損を抱えた運用資産を、複数のファンドに移すなど複雑な操作をして損失計上を回避。2008年ごろの企業買収で必要以上の資金を支払い、損失の穴埋めに充てた。過年度の決算の訂正や、今後の決算で損失計上を迫られる可能性が強く、証券取引等監視委員会なども詳しい調査に乗り出した。
同日、オリンパスは森久志副社長を解任、山田秀雄常勤監査役が辞任の意向を示したことも発表した。森氏は取締役には残る。すでに社長を退任したが取締役に残っている菊川剛氏や当時の経営陣らの責任も改めて問われることが確実。同日会見した高山修一社長は損失案件にかかわった関係者として「菊川氏、森氏、山田氏」と指摘。菊川氏らの刑事告発については「必要に応じ判断する」とした。過去の決算に対する監査が適切だったかどうかも問われそうだ。
1日設置した第三者委員会の調査過程で判明した。同社は90年代から有価証券投資に失敗。一方、08年の英医療機器メーカー・ジャイラスの買収に際し投資助言会社に報酬や優先株の買い戻し資金約690億円、さらに国内3社の買収資金として約730億円を支払った。これら外部に支払ったはずの資金が、オリンパス自身の運用の含み損を解消するために利用されていた。
第三者委は12月上旬までに調査結果を報告するとしていた。7日夜、森副社長が過去の損失の先送りを認めた。高山社長は8日の会見で損失先送り額について「今は申し上げられない。第三者委員会の結果を見たい」と明言を避けたが、少なくとも数百億円に達するとの見方もある。
損失の先送りについては、オリンパスが設立したファンドに含み損をいったん移動するなど複数の手法を使っていた可能性がある。
英ジャイラスの買収に伴う助言会社への報酬は買収総額の3分の1に当たり、解任された元社長のマイケル・ウッドフォード氏などから「不当に高い」との指摘が出ていた。資源リサイクルを手掛けるアルティスなど国内3社の買収も実際の企業価値より高額だった。一方、00年3月期にケイマン諸島の投資ファンドに300億円を出資するなど、所在が不透明な複数のファンドへの投資が目立っていた。
オリンパスはジャイラス買収時に2000億円以上の「のれん代」(買収金額と買収対象会社の純資産との差額)を資産計上している。過去の決算報告書で、こうした手法が適正だったかどうかが改めて問われる可能性がある。
公認会計士からは「一般論として、本来計上されるべきだった有価証券の損失を計上することになる可能性があり、過去5年間の決算書が修正を迫られる可能性もある」との声もある。
オリンパスは8日朝、「今後も第三者委員会への徹底した情報提供を通じて真相究明を尽くしたい」とのコメントを発表した。
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