日経平均一時下げ幅270円超 下値のめどは プロの見方
7日午前の東京株式市場で日経平均株価は大幅に反落。下げ幅は一時270円を超え、取引時間中としては約3カ月ぶりに9200円台を割り込んだ。4月の米雇用統計で雇用者数の伸びが鈍化したことや、フランスやギリシャの選挙結果が重荷になっている。今週はトヨタ自動車など主要企業の決算発表が相次ぐが、日本株に反転の機会はあるか。市場関係者に下値のめどや今後の見通しを聞いた。

「足元の日本株は底値圏」
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフストラテジスト 芳賀沼千里氏
足元の日本株は底値圏にあるとみている。カギを握るのは円相場の動向だが、欧州の政治動向への懸念を受けたリスク回避の円買いの動きが一巡した後は、円高が一段と進む可能性は小さいとみている。フランスの政権交代で財政再建が遅れるとの懸念も出ているが、実際に政権を担えば現実路線をとらざるを得ず(歳出を拡大させる)極端な政策転換はしにくい。米雇用指標の鈍化で量的緩和第3弾(QE3)への思惑が強まるとしても、米2年債の利回りなどの低下余地は限られており、これまでの量的緩和と比べれば為替相場に対する影響は限られそう。欧州や米経済の動向を確認しながら投資家のリスク回避の姿勢が徐々に和らげば、為替は1ドル=80円前後で落ちつき、日経平均株価も9000円程度で下げ止まるとみている。
企業業績の改善も株価を下支えしそうだ。東日本大震災後にコスト削減努力や海外への生産移管などが一段と進み、企業の利益創造力は高まっている。設備投資の見通しなども慎重になっている企業が多く、海外景気が下振れしても、一方向に業績が下押しされる懸念は小さい。円高圧力が和らいで今期の企業業績回復に対する確信度が高まれば、年央から夏にかけて株価が1万円を再び試す展開もありうる。

「一時的に9000円割れても下値は限定的」
クレディ・スイス証券 株式チーフストラテジスト 大西勝氏
7日の日本株は米雇用統計やフランス・ギリシャの選挙結果を受けて大きく売り込まれたが、ここからさらに大きく下げる要因が現時点であるわけではない。米サプライマネジメント協会(ISM)の製造業景況感指数など米経済指標には改善もみられ、世界のマクロ経済が大きく崩れていない。フランス大統領選などの結果を受けて欧州の政治動向への懸念は強まったが、実際に財政再建路線が大きく変わるかは今後、新政権の政策など具体的な内容をみてみないとわからない。欧州情勢や為替の動向次第で一時的に9000円を割り込む場面がありうるとしても、一方的に下げる展開にはならないだろう。
もっとも日本株が大きく買われる材料も見当たらない。今週は主要企業の決算発表が予定されているが、為替の動向などを踏まえれば会社側が示す今期の業績見通しは慎重にならざるをえず、市場の期待値を下回るものが多くなりそう。さらに、4月の日銀の金融政策決定会合後は日銀の緩和姿勢に対する失望感が広がったこともあり、円高に傾きやすくなっている。日経平均は当面、9500円をはさんで上下500円前後のボックス圏の値動きが続くとみている。

「株などのリスク資産、1~2カ月で底入れも」
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト 上野泰也氏
7日の東京株式市場では連休中の海外の動きを織り込んで、いったんリスクオフの動きが広がった。米雇用の改善が鈍化したことで、目先は米国株を中心にリスク性資産の持ち高を落とす動きが進む段階に入ったといえる。ただ、(金融安全網の強化など)欧州債務問題への対応策の進捗や、(製造業指数の改善など)米マクロ経済の状況などを考えると、昨年ほどの大きな下げになる可能性は低い。調整は長引かず、1~2カ月以内には株式などのリスク性資産の相場が底入れし上向く展開になるのではないか。為替も1ドル=79円台では介入警戒感が出てくるため、一段の円高が進む展開は今のところ見込みにくい。日経平均株価も9000円を割り込んで大きく下げることはないとみている。
リスク要因は6月の国会会期末までの消費税増税の議論の動向と日本国債の格下げ懸念。増税は株式市場にとっては短期的にはネガティブだが、増税ができずに財政再建が進まないとなれば、中長期的に海外投資家の「日本資産離れ」が進む可能性がある。
(聞き手は富田美緒)