旅行大手、ネットに活路 収益構造の転換急ぐ

2010/4/2付
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旅行大手がインターネット販売に活路を見いだそうとしている。近畿日本ツーリスト(KNT)は不採算の営業店舗を減らすとともに、ネット取扱高を3年間で3.6倍に増やす計画を公表した。旅行業界では楽天などネット専業が台頭する一方、KNTやJTBなど既存大手は収益力で劣勢に立つ。ネット販売の成否が大手の収益構造転換のカギを握りそうだ。

「このツアー名ではネット検索で引っかからない」。東京・秋葉原のKNT本社でネット向け旅行商品の開発が進む。紙のパンフレットを使う店頭販売が前提の商品づくりとは勝手が違う。「ネット販売にカジを切らないと会社がダメになる」。IT(情報技術)戦略担当の野中雅彦取締役は危機感をにじませる。

KNTは2009年12月期に2期連続の連結営業赤字を計上。国内宿泊を中心にネット専業に顧客を奪われたのが一因。ネット取扱高は110億円で全体のわずか3%。これを12年12月期に400億円に増やす計画だ。

JTBも「旅行のネット販売がビジネス客からレジャー客にも波及」(高木洋彦Web戦略推進部長)し、収益環境は厳しさを増している。09年3月期に7%のネット取扱高比率を、12年3月期にも12%に高める計画。

個人の海外旅行を主力とするエイチ・アイ・エスはネット販売への移行が比較的順調。09年10月期のネット取扱高は全体の17%にあたる476億円と比率は過去最高。「従業員1人あたりの取扱人数は店舗の5~6倍」(経営企画室)という。

大手をネット強化へと駆り立てるのは、楽天傘下の楽天トラベル(東京・品川)や一休などネット専業事業者の急成長と圧倒的な収益力だ。楽天トラベルの09年12月期の営業利益は88億円。取扱高で業界首位のJTBは、10年3月期の連結営業利益が会社予想で6億円だ。利益でみると業界の序列は一変する。

ネット勢は消費者が宿泊施設を検索・予約できるサイトを運営し、宿泊1件ごとに施設側から徴収する手数料が収益の柱だ。楽天の場合、手数料率は宿泊料金の7~9%。サイト内に掲載する宿泊施設などの広告がもたらす収入も加わる。店舗を置かない身軽な経営が高い収益力の源泉だ。

既存大手は交通機関と宿泊施設などを組み合わた自社企画のパック旅行をネット販売の主軸に据え、ネット勢が得意とする宿泊のみなどの"バラ売り"とすみ分けを図る。大手が「同じことをやって追い付くのは難しい」(KNTの野中取締役)と判断するほどネット勢の侵食は進んだ。

だが大手の思惑通りにすみ分けできるとは限らない。楽天トラベルもセット商品の取り扱いで幅広い需要に応える方針。同社の鎌田啓之執行役員は「総合旅行業を目指す」と大手への対抗心を隠さない。既存大手のネット事業が進む道のりは険しそうだ。(小谷洋司)

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