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信託、資産を世代間につなぐ 生保、リスク資産に投資(金融力シンポ)

――東京市場の活性化に向けて信託・生保はどんな役割を果たすべきでしょうか。

三井住友信託銀行社長・常陰均氏(つねかげ・ひとし)  1977年住友信託銀行に入社。企画部長などを経て、2008年に当時、大手行として最も若いトップとして、住友信託社長に就任した。  バランス感覚と突破力を兼ね備えると評される。09年に、中央三井トラスト・ホールディングスとの経営統合をまとめた。

三井住友信託銀行・常陰均社長 証券取引所が資金の受け皿となる場を提供するとすれば、信託銀行は資産を運用・管理する者として資金を流し込むプレーヤーだ。

1500兆円の個人金融資産のうち、信託銀は年金や投資信託、金銭信託を通じて300兆円程度に関与している。信託という器を通じて、小口の資金を集めて大きな資産に投資したり、不動産を金融資産に転換したり、資産を次世代につないだりと、様々な選択肢を提供している。

資産と資産、マネーと資産、世代と世代をつなぐことで新たな付加価値を創造するのが信託の特徴だ。遺言や相続、贈与などで信託を活用し、世代間の資金循環に貢献したい。

金融市場の中での信託の役割は次の3点だ。1つは有価証券や不動産市場で利便性の高い運用・管理のサービスやインフラを提供すること。2つ目は銀行業務の担い手として、市場の活性化を信用面で支えていくこと。3つ目は機関投資家として、投資家と資金需要者をつなぐリスク配分機能を担っていることだ。

日本生命社長・筒井義信氏(つつい・よしのぶ)  1977年日本生命に入社。広報、支社長、調査、企画など幅広い職務を経験、2011年社長に。  世界の有力な金融機関・保険会社とのトップ交流を積極的に重ね、着実にネットワークを広げている。

日本生命保険・筒井義信社長 生命保険会社は入り口では個人金融資産を保険や年金を通じて吸収し、出口では預かった資金を融資、債券、不動産、株式など多様な形で市場に供給している。生命保険と資産運用は車の両輪だ。

少子高齢化や国家財政の今後を見据えると、国民生活に安心を提供し、社会保障制度を補完する生保の役割は重要になっていく。保険の国内市場は飽和していると言われるが、必ずしも縮小一辺倒とは捉えていない。

次に資産運用の面では約50兆円の資産の3割を一定の運用リスクのある資産に投資している。リスク性資産に配分する機能を保持していることが、生保の資金供給で重要な要素であり、その中核が株式への投資だ。

ただ、国際的な規制強化の流れによって、株式が徐々に持ちづらくなっている。金融危機の再発を防ぐという観点から規制のあり方を見直すのは重要だが、規制の導入のされ方が大事だ。株式投資が難しくなれば、保険商品の提供そのものに影響が出たり、企業の成長のための資金供給に貢献できなくなったりする恐れがある。生保の本質的な役割の発揮に影響が出ることを懸念している。

 三菱UFJ信託銀行・若林辰雄社長 信託という器を通じて分散投資の機会を増やしていくことが信託の果たすべき社会的使命だ。その点で、今後の伸びが期待できる商品としてETF(上場投資信託)やETN(上場投資証券)がある。

ETFはコストが非常に安く、少額で多数の証券に投資したのと同じ効果が得られる。上場商品なので非常に透明性も高い。家計の金融資産に占めるETF関連商品の比率は米国が2.5%、欧州が1.5%。これに比べて日本は1500兆円の金融資産に対し、ETFの残高は4兆円で比率は0.3%にとどまる。これが欧州並みの1.5%まで高まると20兆円以上の市場になる。

みずほ信託銀行・野中隆史社長 信託の商品を通じて顧客が徐々に投資というものを理解し、貯蓄から投資に向かっていくことが大事だ。その1つとして、信託の仕組みを使った従業員持ち株制度(日本版ESOP)が挙げられる。

ESOPは社員持ち株会の変則バージョンだ。多くの企業が社員持ち株会を持っているが、特に若年層の参加率が非常に低い。これをESOPに仕立て変えることで、活性化を図る。ESOPを通じて、従業員が自社株を保有することがリスクのある運用商品に投資する第一歩になるし、従業員の会社への忠誠心も高まる。

第一生命保険・渡辺光一郎社長 生保事業の社会的な使命感や長期投資をする主体としての社会への役割は筒井氏がおっしゃった通りだ。ただ、過去3、4年間は東日本大震災や欧米の金融危機で市場のリスクが高まったため、運用リスクのある資産を管理可能な水準に抑える点を重視していた。

安倍政権の方針もあり、投資環境の潮目が変化してきたと感じている。国内外の経済環境や産業構造が変化し、新たな段階に入っていく中で、新たな資金需要に対応した取り組みを強化し、経済の活性化に役立っていきたい。

具体的には、国内では環境や再生可能エネルギー、介護などの成長事業分野に、アジアでは成長を享受できる各国のインフラ整備資金などに資金を投じていく。2013年度以降の3年間で、少なくとも数百億円規模の資金を投じられるように検討を進めていく。

(モデレーターは日本経済新聞社経済部長、品田卓)

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