2019年1月23日(水)

「めったにないこと次々と」 白川日銀、苦悩の5年

2013/3/20付
保存
共有
印刷
その他

19日に退任した日銀の白川方明総裁は、リーマン・ショックや急激な円高、欧州債務問題と相次ぐ経済危機への対応に追われた。2010年秋には長期国債などを大量購入する「包括緩和」に踏み切ったが、デフレ脱却の道筋をつけたとは言い難い。短期的な成果を求める政治や市場との対話にも苦慮した5年間だった。

「リーマン・ショック、東日本大震災、2度の政権交代と、めったにないことが次々起きた」

白川総裁の5年間は円高との戦いだったといえる。就任直後の08年9月にはリーマン・ショックが発生。同年8月には1ドル=110円だった円相場が東日本大震災や欧州債務危機が追い打ちをかけて、11年10月には75円32銭まで円高が進んだ。

19日の記者会見では「円高が日本経済の下押し要因との認識を強く持っていた」と白川総裁は明かした。海外の需要減と円高が重なって企業収益が急減。2%を超えていた物価上昇率も瞬く間にマイナス圏に沈んだ。「米欧に比べ日銀の緩和姿勢が弱い」とみなされたことが円高の一因だが、海外との緩和競争には「従来以上に難しさがあった」と吐露した。

「中銀が言葉で市場を思い通りに動かすということであれば、危うさを感じる」

黒田東彦氏ら次期日銀首脳部は「市場の期待」への働きかけを重視し、就任前から積極的な緩和姿勢を表明して株高や円高修正を誘ってきた。白川総裁はそうした手法に疑問を投げかけ「デフレの根本的原因は潜在成長力の低下」と指摘。日銀の金融緩和とともに政府の成長戦略が不可欠と繰り返し主張した。

岩田規久男新副総裁らリフレ派とされる経済学者は「日銀がマネタリーベース(資金供給量)を増やすだけでデフレから脱却できる」と主張する。ただ白川総裁は、資金供給量がすでに過去最高に達していることなどを念頭に「マネタリーベースと物価のリンクは断ち切られている」と反論した。

「政策効果だけでなくリスクも説明するのが、民主主義下で中銀に求められる誠実な対応だ」

「趣味は金融政策」とまで評された白川総裁が、最後の記者会見でもこだわりをみせたのが中央銀行論だ。金融緩和と同時に政策リスクも説く白川総裁のスタイルには、政治や市場から「緩和姿勢が中途半端」との批判もあった。記者会見では「(市場や政治の要求は)長い目でみた経済の安定と必ずしも一致しない」と改めて強調した。

白川総裁は中銀の役割を「経済の安定に必要なアンカー」とも表した。リーマン・ショック時には「最後の貸し手」として大量に資金供給し、金融システムを維持した成果があるためだ。ただ財政政策や成長戦略の手詰まり感から、世界的に中銀の金融政策への期待がさらに高まる。「経済の主導役」になりきれなかった苦悩がにじんだ。

日経電子版が2月末まで無料!いつでもキャンセルOK!
お申し込みは1/31まで

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報