個人向け投信、欧州不安が直撃 残高2年ぶり低水準
円高・株安で運用悪化
個人投資家から広く資金を募る公募投資信託の純資産残高が急減している。9月末の残高は前月比6%減の57兆8882億円と5カ月連続で減少し、2年3カ月ぶりの水準に落ち込んだ。欧州の債務危機が急速な円高や世界的な株安を招き、個人投資家に人気の海外の債券や通貨で運用する投信の成績が大幅に悪化。損失を抱えた個人の投資意欲も冷え込んでいる。

投資信託協会が14日発表した9月の投信概況によると、公募投信の残高は1カ月間で3兆9633億円減った。減少額は8月(3兆113億円)から一段と増え、ギリシャ財政危機が深刻になった昨年5月以来、16カ月ぶりの大きさになった。
主因は金融市場の混乱に伴う運用成績の悪化だ。9月は公募投信全体で3兆9470億円の運用損(分配金支給額の影響含む)が発生し、損失額は8月から約8000億円増えた。
投資対象別の成績を見ると、海外資産で運用する投信の苦戦が目立った。9月の円相場は、対ドルでほぼ横ばいだった一方、対ブラジルレアルで14%高、対豪ドルで9%高、対ユーロで7%高と軒並み急上昇。外貨建て投信の成績を圧迫した。
野村総合研究所によると、9月は外国債券で運用する投信の基準価格(分配金再投資ベース)の下落率が平均8.2%とリーマン・ショック後の2008年10月以来、約3年ぶりの大きさになった。海外の不動産投資信託(REIT)を組み入れる投信も平均8.4%下げ、昨年5月以来の下げ幅だった。

運用資産の目減りに伴い、個人の投資意欲も減退している。9月は公募投信の資金流出入額(新規購入から解約・償還を引いた額)が163億円の流出と東日本大震災のあった3月以来、6カ月ぶりの流出超になった。投資の「待機資金」に当たるマネー・リザーブ・ファンド(MRF)などを解約して現金化する動きが広がった。価格変動リスクの大きい資産で運用する「株式投信」は369億円の流入超だったが、流入額は前月の約20分の1に急減した。
個人投資家はこれまで株安や円高が進む局面で自律反発を狙って投信の購入に動くことが多かった。ただ9月は「市場環境の一段の悪化を受けて押し目買いの動きが止まり、解約売りが増えた」(大手証券の投信販売担当者)という。
9月の資金流出額が大きい投信上位20本のうち、5本をレアル建ての投信が占めるなど、高金利や通貨高に注目した個人の「ブラジル人気」に陰りが出ている。為替リスクがなく価格変動の小さい円建ての債券投信は資金を集めているが、投信市場全体で見ると、個人マネーの様子見姿勢が強まっている。
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