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創業・震災復興、リスク資金供給で後押し(金融力シンポ)

――企業再生に向けてはリスクマネーの供給も重要です。

ジェイ・ウィル・パートナーズ・佐藤雅典社長 過去10年で5本のファンドを募集して、約2500億円の資金を集めた。我々が再生に関与して、卒業した企業は100を超えた。

日本全体で見たときに、この数字で足りているか。何千、何万と桁が違う話が世の中に待っているのではないか。さらなるリスクマネーの供給システムが求められる。

安倍政権に代わり、官民ファンドの試みや産業革新機構における資金枠の増加など各種の施策が打たれている。あくまで官の資金は呼び水で、そこに民の資金がついてくるという起爆剤の役割になるのであれば、非常に望ましい。

京都銀行頭取・高崎秀夫氏(たかさき・ひでお)  1967年に京都銀行に入行し、2010年から現職。地域再生のほか、大阪や名古屋への進出にも積極的に取り組んでいる。「なが~いおつきあい」をモットーに掲げ、銀行は「知恵貸し業に変わらねば」と話す。

京都銀行・高崎秀夫頭取 ベンチャー企業の支援・育成に力を注いできた。京セラ、オムロン、ローム、村田製作所、日本電産などの企業の創業期からかかわり合いを持っている。融資のみならず出資も積極的に行い、一歩踏み込んだ支援を続けている。

2000年には独自でベンチャーファンドを組成した。約93社に対して106件の投資を行った。そのうち10社の投資先が株式を公開した。

ベンチャー企業を取り巻く環境は大きく変化しており、新規上場自体が非常に低水準だ。単に上場によるキャピタルゲイン(値上がり益)を回収するといった従来型のベンチャーファンドの手法はもう通用しなくなりつつある。

銀行主導で経営面での支援を行いながら企業価値を高め、経営者による株式の買い取り、ビジネスパートナーへの株式の譲渡といったことを想定したファンドの設立を考えている。融資のみならず出資もひっくるめて、企業の創業支援はもちろん、成長支援、再生支援、事業承継支援などファンドを活用した協力ができないか検討している。

――金貸し業としての従来型の銀行経営は限界に来ていると言われています。今後の求められる銀行像をどう考えますか。

ほくほくフィナンシャルグループ・高木繁雄社長 地方銀行は、昭和18年前後に1県ほぼ1行になるよう合併してできた。その流れのなかで今日がある。経済も文化も、県境どころか既に国境を越えて動いている中で、今の仕組みがベストかどうかは、甚だ問題が多いだろう。

だが、メガバンクと違い一行一行になじみのある企業文化があり、それぞれの個性がある。合併すると、その本質が失われてしまう。それぞれの個性、文化を大事にしながら、協調できることは協調していくのが一つのやり方だろう。

 システムはできるだけ低コストで便利なものであればいいと思っている。横浜銀行を中心に、北海道銀行、北陸銀行、七十七銀行にも入ってもらい共通化した。いままではシステムやビジネスマッチング、商品設計、信用リスクの測定などを一行一行やって膨大なカネがかかっていたが、できるだけ共通化してやろうとなった。

高崎頭取 再編を考えなくていい銀行としてこれからも進んでいきたい。合併は、金融機関に限らずいろんな企業でも、メリットを取り合って、融合に大変なパワーと時間とカネがかかる実例を見ている。お互いが助け合いながらシステムなどの共同化を進めていくことは今後とも積極的にやっていきたい。地銀の強みを生かしつつ、弱みを補完するという目的のために、どんな最適な組み合わせがあるのかを十分検討していく。

東日本大震災事業者再生支援機構社長・池田憲人氏(いけだ・のりと)  1970年に東北大学法学部を卒業し、横浜銀行に入行。代表取締役最高財務責任者を歴任した。03年に国有化された足利銀行では、頭取として再生に取り組んだ。地域金融での豊富な経験と手腕を買われ12年から現職に。

佐藤社長 地域においての強力なリーディングバンクは存在したほうがいい。企業の成長期や再生期には資本性資金が必要であり、創業時も再生期も企業の目ききをしないといけない。

長期信用銀行や各機能を持った銀行で構成されていた戦後の金融システムはフラット化(同質化)してしまった。各地域において強力で多機能なサービスを提供できる能力を持った金融機関をつくっていくのは、今後も地域再生で非常に重要なポイントの一つだ。

東日本大震災事業者再生支援機構・池田憲人社長 いまは預金がたっぷりあるから資金繰り破綻はあり得ない。仮に再編統合があるとしたら、資金利益の問題からだろう。今の地域銀行の優良企業向け貸し出しでは収益が出ない。いい企業はメガバンクが取りに来る。小さい規模の会社を巡る争いになるのではないか。小規模会社はリスクに応じたそれなりのリターンを得られる。

将来10年、20年たって、預金が枯渇したときに収益をどうやって上げていくのかという問題もある。地域金融には第二地方銀行や信用金庫、信用組合があり、地域でも(貸出先の)戦いが生じるのだろう。その結果として、広域で一緒になる可能性もある。今は再編はないが、じりじりとその牙は出てくるのかなと感じている。

 ――脱デフレ実現への鍵を握るのは地域金融。安倍政権への要望はありますか。

佐藤社長 新たな企業の支援も大切だが、今まで頑張ってきた企業をきちんと再生していくのも、成長戦略の非常に重要な役割だ。「地域の再生は成長戦略の1丁目1番地」と確信している。

討論する(左から)高崎、高木、佐藤、池田の各氏(4日午後、東京都千代田区)

戦後、長期金融を中心として、資本性資金の還流システムは非常によくできていた。当時は経済が復興しておらず、お金はなかった。今は個人金融資産が1500兆円ある。当時の金融に比べて、前提条件ははるかに楽な状況になっているはずだ。

安倍政権は産業投資立国を政権公約に掲げているが、民主党政権の成長戦略も、運用立国という別の言葉で全く同じことを書いてある。金融資産を円滑に管理するには、政権がかわっても同じ政策が必要だ。例えば平成の長期信用銀行法をもう一回つくって新たな金融システムに挑戦をするといった大きな刺激策を求めていきたい。

――東日本大震災の復興の現状はいかがですか。

池田社長 東日本大震災事業者再生支援機構は、債務を抱える事業者の負担を軽減し、再出発資金を支援してきた。従来型の再生はダイエット。もうからない所を取って規模を縮小して再生をスタートさせる。震災復興は、資産がない所から積み上げていかないといけない。いわば栄養補給が必要だ。

機構が開業して1年たち121の支援決定をした。今作業している案件も620ある。支援先は1000までいくと思う。できるだけ多くの事業者の再生を手伝いたい。

金融機関のトップは(再生の重要性を)理解しているが、どうやってその意思を前線へ伝えるかが課題だ。

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